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無縁社会地獄

日常
01 /12 2010
先日、NHKで「無縁社会」とかいう特集をやっていた。
日本社会は核家族化から更に「単身化」が進んでいるという。
その勢いは爆発的である。
「単身化」は日本社会から「家族」という概念を消し去り、近所付き合いや親類縁者の付き合いもなく、やがて「孤独死」が恒常化すると。
取材対象とされた「単身」中年独身男性は、正月になっても誰からも年賀が来ず、近所で実際にあった「孤独死」に怯えて暮らしている描写が映し出されていた。
そしてこれからは、己の死を告知するために、赤外線を使った探知装置を設置して誰かに自分の生死を確認してもらうシステムが必要になってくるかもしれないとレポートは結んでいる。
おそらく、この予想は的中し、遅かれ早かれ妻子を設けられない孤独男性や、「おひとりさま」という自己欺瞞で自分を騙し続けている独身女性はこのような「孤独死」を免れ得ないであろう。
元気なうちはまだいいが、そのうち身体が動かなくなったり、怪我、病気になれば、寂しき自分の部屋でじっと天井を見つめながら「死」を待つしかなくなる。

このような「人生の最期」を本当に「納得して」受け入れられる者がいるとは思えない。
口先では、こっちのほうが気楽だとのたまっていても、いざ実際、自分の身体が動かなくなった時、親も子も親類縁者も近所の人も友人も訪れることないとなれば、孤立無援のまま耐えられる者はいるまい。
しかし、これからはそんな「無縁社会」がスタンダードとなり、死んでも誰にも気が付かれないまま、腐ってミイラ化していくのである。
恐らく、単身男女のアパートマンションは建物ごと死臭を放つ遺体安置所と化すであろう。埋葬も手間と時間が掛かるから、そのまま「墓地」化するしかなくなる。
これが「男女共同参画」が目指した理想の未来の姿だとしたら皮肉なものだ。
まるでカンボジア、クメール・ルージュのキリング・フィールドそのままである。
家族の絆や専業主婦を敵視した者は言うだろう。
「ルームシェアでそんな孤独死は防げる」
ルームシェアがどれ程の助けになるか知れぬが、「家族」という絆と比べれば取るに足らない存在だ。
もし、同居相手に恋人や新たなパートナーが現れたらどうするのだ?部屋から出て行けと言われたら「裏切り者」と罵って絶縁するのか?
結局は「単身者」となって無縁社会に逆戻りがオチである。
所詮「単身者」は孤独の中でのた打ち回って苦悶しながら、人迷惑な死を覚悟しなければならない。
国際資本に操られたマスコミに騙され「消費者」として絞られるだけ絞られた挙句、ミカンジュースの絞り粕の如く捨てられるのが「おひとりさま」の行く末だ。

家族の絆は煩わしいか?
確かにそうだろう。
しかし、専業主婦の苦労や困難は己の子を生み育てることで次世代に「希望」を継承し、それによって成就される。
だが、「おひとりさま」の行く末は、何の「希望」も残さず、現役世代に多大な負担を強いた挙句、人迷惑な死だけが待っている。
ただのお荷物なのだ。
「おひとりさま」に消費能力がなくなった瞬間、それは単なる「腐りかけた肉の塊」だ。
そんな「塵」を社会が負担する余力は、もうこの国にはなかろう。
だれがそんな「役立たず」に手を貸すものか。
だから単身者は「孤独死」を甘んじて受け入れ、専業主婦に対し「社会にご迷惑をおかけして申し訳ございません」と懺悔しながら生き恥を晒すのだ。

「おひとりさま」の部屋は、すなわち己の墓場である。
表札がそのまま自動的に墓標となる。
死んだ瞬間に自動的に焼かれ、そのまま墓地化する「おひとりさま」専用マンション兼墓苑がまもなく発売されよう。
しかし、そんなマンションを買える「おひとりさま」は稀有であろう。
殆どの単身者は、安アパートの一室でうわごとのように己の人生を後悔し、己をこんな孤独に誘い込んだマスコミを怨む呪文を吐きながら死んでいく。
やがてその死体には蛆が集り、その身体は銀ハエの餌となる。
そんなものの為にお前は生きてきたのか?
そうだ!
所詮「おひとりさま」は蝿の餌が関の山だったのだ!
今更悟っても、もう遅いのだよ!
ぎゃー!
泣け!喚け!
しかし、お前の運命はもう変えられないんだ!

そのアパートの部屋は当然、もう価値がないから死体ごと解体されて無縁仏どころか産業廃棄物と一緒に東京湾辺りに捨てられるのである。
もはや人間の尊厳すら与えられない「限りなくゴミに近い存在」として廃棄される。
これからの日本はそんな「無縁社会」で死んでいく「おひとりさま」死の宴一色となろう。

2040年辺りの夏。
東京は死臭に包まれる。「おひとりさま」が今日もどこかで大量死している。だがそれを処理する者はいない。
国も地方自治体もそんな予算はない。放っておくしか術はない。
大量の蝿とカラスが首都上空を飛び交い、まるで帝都は「死都」と化す。
23区内はもうそのまま巨大墓地化するしかなくなろう。
まともな家族を設けた「人生の成功者」はそんな「死都」を捨て、新たな地に遷都するかもしれない。

これが、最も信頼できる日本の将来の姿だ。
もう後戻りすることは出来ない。
甘んじて受け入れよう。「不毛で無意味な死」を。

「孤独死」は辛いが、他に選択肢はないのだからね。
合掌。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/