謹賀新年「年頭のご挨拶」

日常
01 /01 2010
謹賀新年。
そして昨日のコミケット77あびゅうきょスペースにお越しの紳士淑女各位にこの場を借りて御礼申し上げる。
今回は15時までお手伝いが手配できず、ずっとスペース内で過ごす。終了間際に大学当時の後輩が仕事納め後に来てもらったので何とかやり遂げることが出来た。
14時過ぎには創作少年のエリアは閑散とし始める。やはり大晦日は引けが早いのか?
かつて少年創作周辺もごった返すほどの人波があったはずだが、最近は殆ど見ない。コミケ全体の参加者は多くなっているはずなのだが、どうにもこの辺りに限っては実感がない。
イベント終了後、カートで荷物を宅配集荷場にまで引っ張っていく道中、ふと東の空を見上げると巨大な満月が昇っていた。
いつも行くビッグサイト近くの70分1500円バイキング形式のレストランで一服。ここもコミケ仕様なのかウエイトレスがメイド風になっていた。
18時過ぎ帰宅。
昨晩、ぶっとうしでコピー誌を作っていたのでその分睡眠が足りず、すぐに爆睡。
起きたのは、朝の6時前。
「紅白」も「行く年来る年」も観なかったので年越しの感じは一切なく、淡々と夜が明けていくだけ。
テレビを点けたら富士山上空からの初日の出中継をやっていたのでぼっと見る。
ヘリを飛ばしての中継。いっそ決死の冬富士山頂アタックを敢行すればよいものの、楽なほうを取るか。
猛烈な冬型でヘリから撮影される山頂付近は雪が吹き上げられて物凄い状況。
気象予報士が体感気温はマイナス50度位といっていた。
だからこそ、山頂生放送を見たいのだが。テレビが生き残りたいのならば身体を張れ。元F1レーサーをレポーターに据えれば視聴率も稼げように。
もっとも富士山測候所が有人観測していた頃は、そこに人が駐在していた訳。
なんとなくこの富士山山頂から撤退してしまった頃から日本が衰退し始めたんじゃないかと思ってしまう。
因みに昨年の日本人人口自然減は7万人余だったとか。
昨年、7万人もの人間がこの日本列島から消え去り、新たに生まれ来る子供もいないということだろう。
今年はGDPで中国に抜かれるというし、いよいよ終わりが近いと考えさせられる元旦のニュースだ。

午前8時頃、近所の神明宮に初詣。去年から改修中でやっと年末に工事を終えたようだ。
伊勢神宮のような造りになり、能舞台まである。ここの神社は阿佐ヶ谷周辺の大地主なのでお金が潤沢らしい。
その分「神頼み」する場としては俗っぽさが増え、有り難味が減った。
お賽銭が馬鹿馬鹿しく思える。
10時ごろ、ポストを覗いたらやっと年賀状が届いていた。民間になってから到着が遅い。
息子娘がもう中高生の同輩も多く、そんな写真が写っている年賀状を見ると、生きている次元がまったく違うことに気づかされる。
自分の父親が50歳だった時、何をしていたかを考えると、自分はすでに「まっとうな人間」ではないのだ。
やがてフェードアウトしていく幻みたいなものだろう。
人は誰かに必要とされるから生きていける。
その最たるものが息子娘の存在だ。子供にとって親は唯一頼れる存在。だから親は子供に「生かされている」ようなもの。
宇宙飛行士は子供がいる既婚者が選択される。生きる意欲は独身者の比ではないからだ。
世は不況、不況と嘆くが、子持ちの既婚者が路頭に迷うなんて聞いたことがない。
真っ当に生きている人間は、いつの時代にも守られ、その者たちの雇用と生活は保障されている。
切り捨てられるのは「誰からも必要とされていない」無能な独身者ばかり。
「派遣村」云々に屯している者も大抵はそんな「不必要な」連中なんだろう。
独身者、特に誰からも必要とされていない者は50を過ぎればもう、朽ち果てるだけの単なる「有機物」に過ぎない。
やがて腐臭を放って周りから疎まれ、孤独の中に死んでいく。
50にして誰からも必要とされない人間ほど哀れなものはない。
社会はすべて有用な者だけを受け入れる。役立たずを受け入れるほど社会は寛容ではなくなる。特にこれからの日本はね。
結局、2010年の正月も、「現実の恐怖」に苛まされることになった。

そうこうしているうちに、あっという間に陽が西に傾き始める。
さっき初日の出を見たばかりなのに、何故だ?
若い頃の正月はもっと長かったはずなのに。
歳と共にエネルギー代謝が衰え、すべての事象が限りなく希薄になり時間の質量もどんどん軽くなっていく。
2010年という「未来」も、誰かに必要とされない人間にとってはどうでもよいことになる。
今が「21世紀」であろうとなかろうと己の存在感が希薄になってしまえば、時代などどうでもよくなる。
ただ日が昇ってきて、暗澹たる時間が過ぎ、日が落ちて闇が来る。
その繰り返しの何回目かに過ぎず、2010年だろうと、2199年だろうと、1959年だろうと「要らない人間」にとっては同じようなものだ。
「2010年ってどうなっているんだろう」と夢を馳せた少年時代は幸いだった。もし己の現実を知ったら卒倒して泣き喚き、こんな2010年を迎える己を創造した神を恨むであろう。
でももはや遅きに失した。
諦めろ。少年時代の自分。お前の2010年はこんな惨めな未来だったのだ。

もう元旦が終わる。
何もせずに終わる。
「パパ!明けましておめでとう」とはしゃぐ息子娘もいない。
「あなた、おめでとう」と囁く美しい妻もいない。
誰からも電話もメールも来ない(夕方、同人仲間の一人からは来た)。
お年玉は無縁だ。親族からは相手にもされていないからね。もっともあげるお金もないが。

ただ、いつもと同じように無益で孤独な時間が過ぎ行くのみ。

今年もよろしく。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/