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10月の妄言その1

日常
10 /27 2023
2023年も10月半ば。
金木犀の香りも旬を過ぎてきた。
今年は秋の長雨や台風来襲がなくて未だ秋という実感がわかない。
晩夏をずるずると引きずるような気候が続く。
先日、久々に本屋に入る。
いつからか本や新聞がなくとも不便さを感じなくなったのかよく解らぬが、書棚に昔手に取っていたミリタリー等の雑誌が存在しているのを見て、恰も本屋そのものが博物館になっているような錯覚に陥る。
雪崩を打つように情報がWebに移行し、紙の媒体が過去のものになりつつあるのに、「昭和」の雑誌や文庫が生き残り続ける不思議さに眩暈がする。
この膨大な紙の媒体は何時まで存在できるのだろうか?
これが消え去った世界はきっと「虚無」に違いない。

AI
AI生成のイラストが急激に「進化」して恐るべき状況になっているようだ。
自分はAIを扱ったこともなく、実際の所はよくわかっていない。
しかし誰かがSNSに上げたAIイラストを観ると何かしら妙なザワツキを感じる。
指の数がおかしかったり、物理的な法則と合致していない構図とか、そういう描写は正直どうでもよい。
AIがどういう「思考回路」で描いているのは知らぬが、人間の感性に訴える「何か」を最優先に描き出す「能力」に驚かされる。
スタニスワフ・レムの小説『ソラリスの陽の下に』に出てくる思考する惑星ソラリスの「海」のように人間の脳をスキャンしているかの如きだ。
もはやこのようなAIによる「作画革命」を止める事は誰にもできまい。
写真の発明と同じ位のインパクトがある。
しかしこのようなレボリューションに大きな反発を抱くクリエーターも少なくない様だ。
AIは元々既存の膨大な人間の描いた作品を「学習」しアレンジして「注文主」のオーダーに応える。
つまりは元々「誰かの描いた」ものを加工しているのでAIが一から描いている訳ではない。
著作権等も相まってAIに対する憎悪を燃やしている者もいる。
だが待て。
人間だって既存の作品に影響を得て、それをアレンジしてオリジナル化していると考えればAIも人間もやっていることに大きな違いはない。
純粋なオリジナル作品などこの世には存在しない。
全ては既存作品の「模写」から始まる。
AIに反発を抱くクリエーターは何に対して怒っているのだろう。
AIというシステムそのものなのか?あるいはAIを使って「作品」を作っている者に対してなのか?
どっちにしろAIという「道具」がこの世に生まれてしまった以上、時を逆行させることは出来ない。
AIを打ち壊せとか、禁止にしろと叫んだところで誰も聞く耳は持つまい。
写真機が発明され、これまで画家が独占していた肖像画がシャッター一押しで「処理」できてしまったからといって、それ以降、画家という商売が絶滅したなんて話は聞かない。
AIは新たな独立した表現方法の一つに過ぎない。
人間が作り出す「創造物」を侵食するとか、排除するとかなんて危惧は滑稽でもある。
もし、AIに己の作品が「学習対象」にされたくないのであれば、Web上にアップしなければよかろう。
別人がアップすることを恐れるならば、そもそも何も描かずに己の脳の中にしまっておけばよい。
表現物というものは程度の差はあっても、誰かの目に留まればいずれ「学習」や「アレンジ」の対象にされる。
それがAIか人間かだけの話である。
AIは人間と違い、一瞬にして膨大な数の作品を劣化のないカタチで「模写」するが、それが「時代」というものだ。
汽車や車、飛行機という「文明の利器」によってそれまで何日もかかった旅がどんどん短縮されたから言って「熟練した御者が扱う馬車で要した時間を短縮するなんて許せん!」なんて怒ったところで相手にされないのと同じ。
クリエーターはこういう時代の宿命に適応していかねば生き残れまい。

いずれAIは進化が早すぎて近いうちに「袋小路」に突き当たるのは想像に難くない。
意外と10年以内にAI作成画像なるものは人間の理解不能な領域まで達するかもしれない。
その後、AIはAIなりに独立独歩で「表現活動」していくだろう。
守旧的な思考にしがみ付いたところで不毛である。見捨てられるだけ。
もはやAIは重要なツールの一つだ。
それを使いこなせる者だけが生き残れる。
 









あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/