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宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』感想(ネタバレあり)

映像鑑賞
07 /17 2023
宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』を封切三日目の16日に観る。
何の前宣伝もプログラムもグッズ販売もない状態での上映。
原作本も読んでいないし、もっともこの題名の著書とは内容が全く無関係らしく、ではなぜこの題名にしたのかも皆目解らず。
いずれにしろ、情報が洩れる前に観ておこうと、コミケ原稿の合間を見て映画館へ。
前宣伝がなかったにも拘わらず、映画館は家族連れで満員。
これだけ秘密主義を貫いたのだから、突飛押しもない奇妙奇天烈で説教塗れの話かと思いきや、何とも真っ当で宮崎駿テイストに満ちたいつもの「ジブリ」作品でいささか拍子抜け。
監督自身が実写で2時間、映像は止め絵のみで団塊世代の優秀さを説教する作品だったらそれはそれで告知なしの封切にも意味があろうが、これまでのジブリテイストとほとんど同じスタンスだったので全く無意味。
どうしてこんなプロモーションにしたのかよく解らない。
それはさておき、『崖の上のポニョ』以降、不条理で意味不明なアングラ的表現が過ぎ、もう老害痴呆状態になってしまったのかと心配した宮崎駿監督だが、今回の『君たちはどう生きるか』は真っ当な異世界冒険活劇構成が復活して、作品総体としては『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』レベルに達してそれなりに見応えのある仕上がりになっていた。
やはり腐っても宮崎駿だ。
80歳を超えても驚異的創作エネルギーは衰えていなかった。
序盤は何処か小松左京の短編SF『くだんのはは』を連想させる造りで不気味。
アオサギの正体が諸星大二郎の描くキメラ生物みたいで生理的に気持ち悪い。
しかし、主人公が異世界に堕とされた中盤以降はいつもの宮崎駿節全開でその世界観に没入。
可憐なヒロインも登場し、美味しそうなデザートシーンも外せない。
総合的に観ると漫画版『風の谷のナウシカ』終盤での禅問答をカタチを変えて描いている気もする。
「死と再生」を象徴する「石室」と「産屋」は正に「シュワの墓所」だ。
結局そこに秘められた「希望」を最終的に破壊してしまう結末も似ている。
あと、すみっこぐらしみたいなキャラや変なインコの大群も出てきてジブリ的グッズの新アイテムとして抜け目がない。
主題歌、声の出演もエンターテイメント的有名俳優、ミュージシャンが担当し、いつもの「ジブリ大作」と何らスタンスが変わりない。
であるならば、それこそタイトルを『君たちはどう生きるか』なんて珍妙で古臭い文学に寄せるのではなく、ジブリの王道を行く『眞人とヒミの大冒険』でよかったのではないか。
プログラムやグッズも初日から用意していればそれなりに売れたはずだ。
すみっこぐらしみたいなキャラと滑稽なインコはマスコットとして子供たちに受けただろう。
それをしなかったのは単に商機を逸しているだけで他に何の意味もない。
不可思議な秘密主義とひねり過ぎたタイトルによってせっかくの夏休みジブリ大作も煮え潰れてしまう恐れも。
映画を観終わって何のグッズも売っていないロビーでの空虚感が勿体無い。
商売っ気がないと言ってしまえばそれまでだが、商売する気がないのなら正にもっとアバンギャルドで抽象的で投げやりめちゃくちゃな作品を作ればよかったのだ。
あまりにも真っ当すぎるジブリ王道作品なのに奇を衒い過ぎたプロモートで、結局相殺され可も不可もない凡庸な印象に終わってしまうのが残念に思われる。
映画館を出ると猛烈な暑さ。
壁に貼られている内容とは全然かけ離れた『君たちはどう生きるか』のポスターを見て、やっぱりタイトルは『眞人とヒミの大冒険』にすべきだったのだと、どうでももよいことを呟きながら40C近い気温の中、トボトボ帰宅するのであった。
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あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/