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コミケ新刊入稿完了

創作活動
12 /17 2009
15日に冬コミ頒布用自費出版原稿を入稿。今回は新刊2冊分。共にカラー表紙。
複数のカラー表紙本を準備したのは今回が初めてだろうか。
商業誌活動に目途がつかないため、自ずと頒布日時が決まっている自費出版のほうに比重が掛かってしまう。

最近、不況のせいかは知らぬが、同様に同人誌イベントへ活動範囲を広げざるを得ないプロ漫画家が目立つという。
いわいる大手出版社という「版元」を通さず、「直販」で自分の作品(本)を売り捌く販売形態への移行だ。
その代表格がコミケットなどの同人誌イベント。
だが、そのような「直販」のみで「プロ漫画家」が衣食住を賄えるほどの純益を上げる事は可能なのだろうか?
いろいろと推測してみた。
かなり大雑把な勘定になるが、仮に同人誌イベントで年間200万円の純売り上げを得られるとしよう。
これで満足な生活が確保出来るかは別として、まあ少なくともソコソコな稼ぎにはなるだろう。
そのためには、年2回のコミケットで最低でも1回のイベントで100万円の純益を上げないといけない。
1冊頒布価格500円として考えると少なくとも2000部の売り上げが必要。しかし印刷費その他経費を考えると2500部位売らないと目標まで到達しないだろう。
コミケットで2500部以上売り上げるサークルがどの位あるか知らない。
恐らく壁際に配置されたサークルの幾つかはその程度、売りさばいているのかもしれないが、いずれにしろそんなに多くはない。
つまり、「大手」と言われるサークルさえ、そんなコンスタントに100万以上売り上げるのは難しいと思われる。
ましてや「2次創作」ではない「オリジナル」でそこまでの売り上げを確保できる「自費出版メインのプロ漫画家」が多数存在出来るとは思えない。
仮にそこまで自費出版で売れるのならば、商業誌連載は容易だろう。「版元」が放っておかないだろうし、何も自腹を割いて同人イベントにこだわる必要はないのだ。
だから「自費出版メインのプロ漫画家」というのは考えづらい。
以前より「直販」の間口が広がったとはいえ、自費出版活動のみで「プロ」並みの稼ぎを上げるのは容易なことではない。「とらのあな」等の漫画書店での委託販売やネットダウンロード販売など販売ルートは増えてはいるが、それでも大手出版社という「版元」依存で商業誌連載の原稿料、印税と比べたら微々たる数字。
つまり、プロ漫画家が同人誌イベントに頼らざるを得ない状況は、正直「止むに止まれず」という事情があってこそなのだ。
同人誌イベントはあくまで「お祭り」であって、生活云々の基盤にする場ではない。現状ではあくまでPR,自己宣伝の場の域を出ない。
とはいえ、社会情勢は厳しく、出版社も台所事情は苦しいと聞く。
ある程度、利益が見込める作家でないと安定した連載の場を確保するのは難しい。
同人誌イベントがまだまだ商売の場として脆弱であることは解っていても「直販」に流れる「プロ漫画家」が多いのは、一方で旧態依然の版元との関係性も関わっているのかもしれない。
印刷のクオリティーや納品形態は、いまや自費出版同人誌の方が遥かに勝っている。
大量生産前提の商業漫画雑誌の印刷度合いや、未だに写植、紙原稿依存の版下入稿形態、原稿管理の現状から比較しても自費出版のほうが漫画家に「やさしい」(もっとも、こちらがお金を出すのだから当然と言えば当然なのだが)。
今後、同人誌イベントや書店委託、ネットや携帯によるダウンロード販売市場がどんどん伸びていけば、「版元」の依存から脱却する「プロ漫画家」が増えることは容易に予想出来る。
というか、少子高齢化や生産人口の減少によって漫画出版社の存亡さえ危うくなるやもしれぬ今日、賢明な漫画家諸氏がいつまでも「版元」に頼って生き延びれようとは思って居まい。
己の活路は己で切り開かねば生き残れない。
その選択肢の一つとして同人イベントがあることには疑いはない。
漫画に限らず「直販」という選択はどんな業種にも見られる。
本当に「版元」に頼らずして成り立つ「漫画家」がスタンダードになる未来が存在するかは知らない。
しかし、自己表現を糧として生きる者にとっては僅かの可能性も逃してはならぬのだ。

でも、経費や売り上げを第一義に考えていると「仕事」と変わらなくなってしまう。
たとえば、印刷所に入稿が早ければ早いほど費用が安く上がるからそれを計算してスケジュールを組んだり、セット割引なんかも利用したりと原稿執筆以外で気を使わねばならぬ。一冊の頒布価格もある程度利潤を求める価格設定を組まなければいけない。しかし利益度返しでオールカラー本を格安で頒布している「趣味優先」のサークルなんか見てしまうと、なんだかやりきれない気分になってしまう。
「貧すれば鈍す」

やっぱり同人誌は楽しく作るべきだ。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/