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1966年台風26号の事

地震、火山、気象、自然災害
10 /10 2009
季節柄、金木犀が香る季節となった。
と同時に、今は台風シーズンでもある。
先日の台風18号は2年ぶりに本土上陸して関東地方を通過していった。
例によってマスコミは「伊勢湾台風クラス」と過剰報道。
そして例に漏れず、そんな甚大な被害をもたらすレベルではなかった。

何回か事あるごとにこの日記でも述べているが、自分がこの半世紀近く東京に住んでいて「恐怖」を感じる位の台風は記憶上、2回しかない。
一つは1979年10月の台風20号。海上での史上最低気圧870mbを観測した超大型台風。
日本本土上陸時には960mbに衰えていたが、それでも日本列島を縦断し、100人近くの犠牲者が出た。
ちょうど大学から帰宅する京王線に乗っているときに最接近。物凄い風で首都圏の電車は軒並みストップ。復旧は夜になってからで6時間ぐらい車内に閉じ込められた思い出がある。
首都高の車もひっくり返り、車窓から見える鉄塔も捻じ曲がって倒れていた。
先日の台風18号では「形式的」に風速25m以上になったからJRは止まったみたいだが、この時の台風では実際、架線や線路が強風のために損傷を受けて物理的に止まってしまったからレベルが違う。
そしてもう一つのほうは相当前の事で、どの台風だったか定かでなかったが、いろいろ調べてみると、どうやら1966年の台風26号らしい。
まだ6歳か7歳の頃、未明に関東地方のすぐ西を高速で駆け抜けていったこの台風は、富士山山頂で史上最高の91m/sの最大瞬間風速を記録するなど型破りに強力で、東京でも物凄い風が吹きまくり、家が吹き飛ぶんじゃないかと思う位で布団の中でうずくまっていた。
小さい常夜灯が停電のせいで点いたり消えたりして、早く通り過ぎてくれないかと子供ながらに祈っていた。
翌朝は台風一過の快晴。しかし庭の大木は傾き、至るところ風で吹き飛んだものが散乱していた。
結局、この台風で山梨や関東地方中心に300人以上が犠牲者となった。
この年は他にも宮古島で最大瞬間風速85.3m/sという日本の観測史上1位記録する第2宮古島台風が現れるなど凄いものがあった。
得てして1950~1960年代半ばは強力な風台風が多く、前年の1965年台風23号は室戸岬で台風として日本の観測史上最も強い最大風速69.8m/sを記録したりと、当時の台風は桁違いだった。

余談になるが自然災害以外にも、1966年というのはいろいろとインパクトの強いことが起っていた。
特に航空機事故。
全日空とカナダ航空の羽田墜落事故と日を置かずに富士山に英国航空の旅客機が墜落。更には山陰の方でYS11が墜落と立て続けに事故が続発。
これは我が人生において最初に記憶に焼きつく「社会的事件」だった。
他にも諸々紐解いてみる。
特にテレビ番組は象徴的だ。
NHK連続テレビ小説「おはなはん」を始めとして「サンダーバード」、「ウルトラマン」、「おそまつクン」など強力に記憶に残る作品があったのだ。
と同時に、当時の最先端情報ツールであるテレビにどっぷりと浸かり始めた頃でもあった。
自分にとってこの1966年頃から1970年辺りまでが「物凄いエネルギー」を感じた時代。
前途した台風26号もそんな「時代のエネルギー」を象徴した自然現象だったかも知れぬ。
因みに伊勢湾台風も、この台風26号も、確かに勢力は強かったがそれだけではなく、急速に発達しつつ、猛烈な速さで東海から三陸沖へループ状に駆け抜けたことが被害を甚大にしたようだ。
台風自体のエネルギープラス位置エネルギーが加わって、桁違いのパワーを見せ付けたのだ。
ここ近年、そのような事例の台風が首都圏には来ていない。
だから、いくらマスコミが「伊勢湾台風クラス」と騒いでも、のろのろやってくるだけでは、大したことにはならない。
当時は気象衛星もなく、観測地点も限られたから1966年台風26号の実態は解らないが、もし今この事例に当てはまる台風が来たら桁破りの記録が観測されよう。
再び富士山で90m/s以上の風速を記録する台風がやって来たら、首都圏はどうなるか?
桁違いの風、おそらく最大瞬間風速60m/sは吹くだろうから電車転覆もありえるし、携帯の基地局が軒並み破壊されたり、高層ビル、マンションが甚大な被害を被るかも知れぬ。また湾岸地域は高潮で広範囲に水没。
テレビ局が「洒落」でやっていた台風実況アナが実際飛ばされて行方不明になったりと従来の常識を遥かに超える被害が出るかもしれない。
1966年から46年、半世紀近く、そのようなスーパー台風が首都圏に来襲しないまま、驚異的な変貌を遂げている東京。
当時は高層ビルなんて一つもなかったのである。
俄かに心配。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/