アニメ映画『ソングオブザシー海のうた』を観る
映像鑑賞
先日、阿佐ヶ谷のミニシアター「ユジク」で上映されたアイルランドのアニメ映画『ソングオブザシー海のうた』を観る。
2014年に制作された作品。
チラシを見ただけだと1970年代っぽく、そのリバイバル上映かと思ったが、ごく最近の作品であることを知る。
制作から2年経ってやっと日本でもミニシアター系のみでロードショーが始まったようだ。
アカデミー賞のアニメ部門にもノミネートされるほどの作品にも拘わらず、あまり話題にならなかったのはなぜなのだろう?
ヨーロッパ系の長編アニメ自体、珍しく、興行的な期待が薄かったのだろうか?理由はよくわからない。
(これ以降はネタばれあり)
内容はアイルランド神話をベースに現代を舞台とした兄妹が繰り広げる冒険物語。
日本やアメリカ製のアニメに慣れ親しんだ目から見ると非常に新鮮。
絵本風のデフォルメされたキャラクターや背景画が美しく、興味深い。
フォーマットの絵柄は70年代っぽいが最新のCGを取り入れているので古さと新しさの融合がよい効果を醸し出している。
どことなく、近年のジブリ作品を髣髴とさせるイメージが通り過ぎるが、そもそも東映動画からジブリに至る名作系アニメの原点は欧米の御伽噺や神話アニメを素材にしている場合も多く、ネタが廻りめぐっているだけのこと。
むしろ本家は欧州にある訳で、この作品こそジブリの原点に戻っているのである。
舞台が現代のアイルランド港町風。
普段、日本で生活しているとアイルランドの町並みなど殆ど知ることはない。
古い町並みが維持されてはいるけれど、送電鉄塔や路線バス、そして森林に不法投棄されたテレビなど、今風の世情も描かれていて面白い。また、ハロウィン行事も今尚廃れずに維持されている国柄も内容に反映されている。
この作品ではセルキーというアイルランド神話に登場する神話上の架空生物(妖精)がテーマの下地になっている。
海ではアザラシの姿だが陸に上がると衣を脱ぎ捨てて人間の姿になるとか。
その衣を廻ってストーリーが進む。
日本での羽衣神話に近いか?

結局、主人公の兄妹よりもセルキーの妻に去られたその父親の生き様に心が揺さぶられた。
海や天に還るのは、洋の東西を問わず、決まって妻や彼女である。
男が天界や海に帰ってしまう例はあまり聞かない。
結局、女は海であり、天であり、すべてを取り込み、男を翻弄する存在なのだろう。
男は必死になって女が聖地に還るのを阻止しようとするが、結局すべては徒労に終わるという結末は揺るがない。
男は常に地上に残される存在なのだ。
一応ハッピーエンドのお話であったが、やはり残された男の悲哀がヒシヒシと感じられる作品であった。
2014年に制作された作品。
チラシを見ただけだと1970年代っぽく、そのリバイバル上映かと思ったが、ごく最近の作品であることを知る。
制作から2年経ってやっと日本でもミニシアター系のみでロードショーが始まったようだ。
アカデミー賞のアニメ部門にもノミネートされるほどの作品にも拘わらず、あまり話題にならなかったのはなぜなのだろう?
ヨーロッパ系の長編アニメ自体、珍しく、興行的な期待が薄かったのだろうか?理由はよくわからない。
(これ以降はネタばれあり)
内容はアイルランド神話をベースに現代を舞台とした兄妹が繰り広げる冒険物語。
日本やアメリカ製のアニメに慣れ親しんだ目から見ると非常に新鮮。
絵本風のデフォルメされたキャラクターや背景画が美しく、興味深い。
フォーマットの絵柄は70年代っぽいが最新のCGを取り入れているので古さと新しさの融合がよい効果を醸し出している。
どことなく、近年のジブリ作品を髣髴とさせるイメージが通り過ぎるが、そもそも東映動画からジブリに至る名作系アニメの原点は欧米の御伽噺や神話アニメを素材にしている場合も多く、ネタが廻りめぐっているだけのこと。
むしろ本家は欧州にある訳で、この作品こそジブリの原点に戻っているのである。
舞台が現代のアイルランド港町風。
普段、日本で生活しているとアイルランドの町並みなど殆ど知ることはない。
古い町並みが維持されてはいるけれど、送電鉄塔や路線バス、そして森林に不法投棄されたテレビなど、今風の世情も描かれていて面白い。また、ハロウィン行事も今尚廃れずに維持されている国柄も内容に反映されている。
この作品ではセルキーというアイルランド神話に登場する神話上の架空生物(妖精)がテーマの下地になっている。
海ではアザラシの姿だが陸に上がると衣を脱ぎ捨てて人間の姿になるとか。
その衣を廻ってストーリーが進む。
日本での羽衣神話に近いか?

結局、主人公の兄妹よりもセルキーの妻に去られたその父親の生き様に心が揺さぶられた。
海や天に還るのは、洋の東西を問わず、決まって妻や彼女である。
男が天界や海に帰ってしまう例はあまり聞かない。
結局、女は海であり、天であり、すべてを取り込み、男を翻弄する存在なのだろう。
男は必死になって女が聖地に還るのを阻止しようとするが、結局すべては徒労に終わるという結末は揺るがない。
男は常に地上に残される存在なのだ。
一応ハッピーエンドのお話であったが、やはり残された男の悲哀がヒシヒシと感じられる作品であった。