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大崎章監督『お盆の弟』を観る

映像鑑賞
02 /04 2016
新宿の「シネマート新宿」で上映中の大崎章監督『お盆の弟』を観る。
この監督とは、自分が通っている阿佐ヶ谷某バーで知り合い、最初の監督作品『キャッチボール屋』でエキストラ出演させていただいた仲。
その時、キャッチボール屋先代役で庵野秀明氏が出演しており、ロケ先で一言二言、お話した記憶がある。
今回の『お盆の弟』は大崎監督の第2回作品。
かなり各方面で評判のようだ。
この日は平日だったが、レディースデーでもあり、席は殆ど埋まっていた。
自分は実写映画には疎く、出演している役者さん、俳優の名も判らないが、映画として純粋に楽しめた。
ストーリーは、売れない30代後半映画監督の男性が主人公。
何もかもうまくいかない燻った人生が淡々と描かれている。
自分は昔のATG映画のような「不幸自慢」的作品は生理的に拒絶反応を起こすので大変苦手なのだが、この『お盆の弟』は、幸いそのような要素は少ない。
むしろ、「貧すれば鈍す」の典型的な「ダメ人間」に共感するところ大いにあった。
時々、TVで夢を叶えた有名人が、昔の下積み時代の苦労話を、さも自慢げに紹介する番組があるが、あれは何の役にもたたない。
実力と努力と才能と運がたまたまシンクロして「成功」したまでのことで、そんな人間は万に一人居るか居ないかだ。
だからそんな稀有な「成功者」の話など聞いたところで、ルサンチマンとストレスがますます鬱積するだけ。
精神衛生上よろしくない。
むしろ、大多数のクリエーターはこの『お盆の弟』の主人公のような、世間に見放され、惨めで恥塗れになってのたうちまわるのが普通。
そう、若い頃の苦労より、もっと辛い苦労が待っているのが「売れないクリエーター」の宿命なのだ。
そんな「人生の敗北者」の姿を見て、人々は「あんな人間にならなくてよかった」と安堵に浸るのである。
だからこれは、うまくいっていないクリエーターにとっては、ヒーリング映画にもなる。
映像的にも全編モノクロームな雰囲気がより悲哀を醸し出す。
詳細なストーリーはネタばれになるのでここには記さない。
是非、映画館で鑑賞し、この「惨めさ」を堪能すべきだ。
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『お盆の弟』は新宿シネマートで5日まで上映中。
また、2016年2月13日(土)に東京都多摩市のベルブホールで大崎章 監督と足立紳 氏(脚本)によるトークイベントと『お盆の弟』上映会が実施されるそうだ。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/