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第26回百里基地航空祭レポート

祭り
09 /15 2009
第26回百里基地航空祭が、先日の9月13日に茨城県小美玉市航空自衛隊百里基地にて開催されたので出撃してみた。
今回で4回目の参加。
この基地祭の名物といえば、特産品販売・・ではなく、驚異的ともいえる渋滞だ。
2004年の時はJR石岡駅より往路シャトルバス内に6時間閉じ込められ、基地に着いた時にはイベント終了後。
会場に流れる「蛍の光」が印象的であった。
2007年開催時には暑さのため飲料ドリンクが完売してしまい、1キロにも及ぶバス待ちの列に渇きに魘されながら2時間近く炎天下に立たされるという酷い目にあっている。
「陸の孤島」と揶揄される百里基地は、公共交通機関によるアクセスが極端に悪く、少しでも一般車両が集中するとまったく動きが取れなくなってしまうのだ。
地元のバス会社も抜本的に対策を考える様子はなく、毎回のように「難民」を発生させている。
唯一バス以外の公共交通だった鹿島鉄道も廃止され、状況はますます悪化。
こんな劣悪な場所に民間の茨城空港を併設する発想は何かの冗談にしか感じないが、実際作っているらしいので驚異の極みである。

ということで、毎回直前まで行くのを躊躇うのだが、首都圏で唯一の戦闘機部隊が配置され、機動飛行も見られるので、その魅力は捨てがたい。
天候や体調を天秤にかけて、とり合えず今回も参加に傾いた。
前回、交通費捻出をATMに頼ったあまりに帰りの交通費が足りなくなるという失敗に懲り、今回は余裕をもった金額を財布に確保する。
地元JR中央線阿佐ヶ谷駅を午前5時15分発の東京行き各駅停車に乗り込み、出発。
神田から山手線経由で上野駅へ。
上野より常磐線快速午前6時4分発水戸行きに乗り換え、一路石岡へ。
石岡には午前7時20分頃到着する。片道料金1620円。

まあ、ここまでは順調。
問題は石岡駅から百里基地までのシャトルバスである。
毎回、過酷な「難民ドラマ」を演出してくれるから、今回も何が待っているか戦々恐々。
まず、駅に降りてみると、幸いにもバス待ちの列はそれ程でもなく、流れもスムーズ。
列の途中で往復チケットを購入。
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なにやら抽選引換券も付いて料金は1600円。
電車料金も合わせると自宅から百里基地まで最低往復6440円掛かる。
入間基地だと往復720円(因みに所要時間はわずか50分足らず)だから、料金の上でも百里詣ではキツイといえる。
余談だが今回、バス停にて先着順に特製団扇がもらえた。

さて、百里基地行きバスには午前7時55分頃に乗り込むことが出来た。
ほぼ30分前後しか待たなかったのは、これまでで最短だったかもしれない。
滑り出しは好調だ。
石岡駅を出てしばらくバスは快調に走る。
このまま行けば午前9時前には到着することが可能かもと期待が膨らむ。

しかし、やはり百里はそんな甘い「世界」ではなかった。
20分ほど走ると突然渋滞に捕まる。
そして殆ど動かなくなってしまった。
そう、シャトルバスは毎度お馴染み「難民バス」と化したのだ。
30分くらい経つと、バスを諦め、歩きはじめる乗客が出始める。
車列は完全に徒歩より遅くなっていた。
自分も1時間ほど我慢していたが、交差点でどんどん車が合流してくるのを見て午前9時45分、遂にバスを降りることを決断。
バスの運転手に徒歩でどのくらい掛かるか尋ねたが、道に慣れていないらしく解らないとの事。
とにかく行って見なければ話にならない。
幸い、「徒歩難民」がたくさん歩道に居たのでそれについて行けば大丈夫だろう。
渋滞に捕まっている車をどんどん追い抜きつつ、百里までの「徒歩行軍」の始まりである。
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退屈しのぎに車のナンバーを調べる。
やはり、地元の「水戸」「土浦」が多い。
この辺りは車以外の移動手段がないから、何処へ行くのも車なのだろう。
それに休日ETC1000円とかいう制度で、国がますます自動車利用を促すからこんなことになるのだ。
何処が「地球にやさしく」だ。
排気ガスに咽ながらもひたすら歩みを進める。
この辺りは田畑以外は鬱蒼とした雑木林が点在して心地よい。
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穂を垂れた稲が黄金に輝き、普段23区内では目にしない光景が新鮮だ。
40分ほど歩くと、専用バスレーンが見えてきた。
ここからはバスがすいすいと走れるようだ。
「早まったかな」考えるが、自分の乗っていたバスは遥か後方。歩きはじめてから自分を追い抜いていった車は皆無だったから、いずれにせよ徒歩のほうが早い。同じような境遇の客が「ここで再びバスに乗せろ」とごねている。
気持ちは解らんでもないが、揉め事は面倒なので「行軍」を続ける。
そろそろ基地に近いはずなのに、午前中に予定されている展示飛行の轟音が聞こえてこない。
まだ遥か先なんだろうかと不安になった(実際は天候不良で午前中のフライトは延期になっていた)。
携帯のGPSを使って現在位置を確認する手もあったが、パケット代が馬鹿にならないのでやめた。

バスを降り、歩き始めて約1時間。
遥か向こうに管制塔らしき影が見え始めた。
そして道沿いに「セブンイレブン」が。単なるコンビニがオアシスに見えた。
しかし、トイレは長蛇の列。気温も上がりつつあったのでここでドリンクを購入。
コンビニ横の細い路地を進んだらやっと「歓迎門」を発見。
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石岡駅を出てから約2時間。午前11時少し前、百里基地になんとか到着出来た。
滑走路北側、ランウェイ21あたりだろうか。
すでにたくさんの客がシートを敷いて陣取っている。、目立つのは地元高齢者団体。
原則として、シートとかの持込は禁止なのだがお構いなし。それは車も同じで案内には「駐車場は殆どないからパークアンドライドをご利用との事」とは記してあるが、結局「正直者は馬鹿を見る」のか、早朝に自家用車で「殆どあるはずのない」基地駐車場に泊めた人が得をする。
茨城県のような「車至上社会」では、建前の案内や公共交通をあてにする人は生きていけないようである。
自分はとても茨城県に住む勇気はない。

それはさておき、朝のうち霧がかかり靄っていた天候も昼前には回復。予報どおり青空が広がってきた。
11時半ごろ、F15が機動飛行開始。
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やはり戦闘機の爆音は心を揺さぶる。
しばらく滑走路北側にてF15を撮影した後、正午から管制塔下へ。
途中、警備犬の訓練展示エリアがあったので見学する。入間基地でもやっているのだが場所が遠かったので観るのは初めて。
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子供は戦闘機よりもわんこを観るほうが楽しそうである。
警備犬訓練展示を見終わると、地上機展示あたりをうろうろする。
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日差しも強くなって喉が渇きを訴えてきた。すでにコンビニで買ったペットボトルは半分消費。
売店に向かおうかと思ったところで、F4ファントムがエンジンをかけ始めた。
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13時頃からF4とRF4の機動飛行が始まるようだ。F4の部隊は確か沖縄から引っ越してきたと記憶する。
次々と離陸するF4を滑走路際から撮ってみる。
入間ほど人垣がないのでなんとか撮れた。
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対地射撃機動飛行は凄まじいもので鼓膜がどうにかなりそうな爆音。地上ではバルカン砲が唸りを上げる(勿論空砲)がここからは見えない。
高速で通過するF4の姿をカメラに捕らえようとするが難しい。300ミリで追っかけるが大抵はファインダーからはみ出してしまう。ただ、デジカメは撮り具合がその場で確認出来る。失敗はすぐ削除出来るのでフィルムカメラよりは効率がよい。

F4機動飛行が終わるとすぐに売店でドリンクを買う。ペットボトルなぜかみな100円と安い。
お土産も考えるが、ただでさえ交通費が嵩むので無駄遣いは出来ない。
あと、ブルーインパルスとか帰りの時間が気になってどうしても百里は余裕がない。
結局、弁当も焼きそばもキャンセル。百里で買ったのはペットボトル2本のみ。
そうこうするうちに、ブルーインパルスの飛行展示が始まりそうになる。
あわてて、ランウェイ21のほうへ歩みを進める。
今回は滑走路北側の端で見ようかと思っていたが、結局いつもと同じ糸杉が植えてある場所にまでにしかたどり着けず。
これでは毎回同じ構図。だが石岡駅行きのバスを考えると、自ずと此処が安心できる場所なのだ。

14時半よりブルーインパルスに曲芸飛行開始。
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空は所々に積雲がぽっかり浮かんでいて濃い青空とのコントラストが絵になる。一昨年の2007年もこんな空模様だった。まだ夏の気配が残っているのだ。
百里で好天下にブルーインパルスをデジカメ撮影するのは初めて。
フィルム交換の煩わしさもなかったので、どんどん撮る。
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BIだけで150枚近くシャッターを切ったろうか。
視界も良かったのでソコソコ撮れたが、やはり上手い構図に収めるのは難しい。
演技の後半でオリンピック招致を意識したのか空に五輪を描いていた、と思ったがどうやらこれは「梅」か「桜」らしい。
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「お約束」の「バーチカルキューピット」はなぜかあまりにも大きく描きすぎてよくわからなかったが。

15時半、プログラム終了。
今回は遅くならないうちに素早く石岡行きバス停へと向かう。
すでに列が出来始めていたが、2007年の時よりはまし。バスも順調にやってきて、それ程待つことはないという雰囲気だった。
バス停の前で隊員が何やら配布しているのに気が付く。
バス往復券に付いていた抽選券引き換えである。こんなところでやっているのか?
券には「石岡駅」と記してあったが?
まあ、告知されていることと食い違うのは百里ではよくあることだ。
列にバッグを置き、あわてて抽選券と景品を交換。貰ったのはBIのクリアファイル。
15時45分頃、石岡駅行きのバスに乗り込むことが出来た。予想より早いし座ることも出来たのでほっとする。
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しかし、此処からが大変だった。
これまでシャトルバスは往路は難儀するが、帰路はバス待ちを除いては比較的順調だった。
だが今回は違ったのである。
バス発着所を出てすぐ、滑走路脇の基地内の道でまったく動かなくなってしまったのだ。
目の前で帰投するBIやC1を横目に立ち往生のバス車列。
こんなことならしばらく基地内に留まって居たほうがましだった。バスの運転手もバスから降りて辺りをを窺がうも埒が明かない様子。
情報がまったく入ってこない。
所持していたラジオにはNHK水戸FMと茨城放送位しか聴こえてこない。IBSの交通情報では石岡市内国道6号線5キロ渋滞とか。でもいくらなんでもこんなところで全然動かないのは変だ。
1時間半位殆ど同じ場所で足止めである。

陽が西に傾きかけた17時15分頃になってやっと車列が動き出す。
真偽は定かでないが、情報によると基地の出口辺りでドライバー同士のトラブルがあったとか。
いったい誘導員とか警察は何をやっていたのだろう。
トラブルを1時間半突っ立て眺めていたのだろうか?
それ以前の問題として、毎回常識を逸する渋滞を引き起こして居るのに、抜本的対策を考えようとしない主催者や警察、自治体に「学習能力」はないらしい。
もはや怒りすらなく滑稽である。
だから1時間半、車列が動かなかったとしても、もはや驚くには値しない。
これが「百里クオリティー」なのだ。
自家用車やバイクを巧みに操って「建前」に翻弄されない者だけがこの「災難」から逃れられる。中には車に自転車を搭載して百里に挑む賢者もいる。
馬鹿正直に公共交通機関を使ってこの百里航空祭に赴く者は、この毎回のように繰り返されるこの非常識極まりない苦行を強いられる「百里クオリティー」洗礼を覚悟しなければならないのだ。
車がゴキブリのように湧いて出てくる休日の車至上社会でのイベント会場周辺はこれがおそらく「当たり前」の光景なのであろう。

それはさておき、基地を後にしたバスは嘘のように順調に走行する。
朝、苦労して歩いてきた道もあっという間に走破。
黄昏迫る百里原野の美しい車窓を眺めていると、疲れも癒される。
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しかし、順調に走ることが出来たのは石岡まで6キロの地点まで。
国道6号線でまたもや渋滞に引っかかる。
土浦に向かう帰りの車の列に巻き込まれたのだ。
流石に帰路なのでバスを降りて歩きだす人はおらず、ひたすら待つしかない。
それにしても、この渋滞に嵌っている車中の人たちは渋滞による時間や燃料の損失をどう思っているのだろう。鉄道が整備されている場所に住んでいる人たちと比べると何だか痛々しい。
これほどの渋滞は年に数回位であろうが、この「陸の孤島」に茨城空港が完成しても羽田からハワイに行くよりも時間が掛かる状況を果たしてどう解釈するのだろうか?
常盤自動車道につながるアクセス道路や、つくばエクスプレス延長も計画されているとは聞くが、それがいつになるのかさっぱり解らない。
結局、この「百里クオリティー」は暫く続きそうである。

さて、シャトルバスが石岡駅に到着したのは19時20分。百里基地を出て約3時間半である。
2004年程ではないにしろ、今年もまた苦行であった。
朝から何一つ食事していなかったが、お金が勿体ないので何も買わずに石岡駅内へ。
ホームではバスに閉じ込められたのであろう親子が駅の売店で買った菓子パンを無言で食していた光景が印象に残った。
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19時48分。石岡発の土浦行き普通列車に乗る。
20時過ぎには上野行き特急があるのだが、特急料金を払う気すら起きなかった。
結局、阿佐ヶ谷に着いたのが22時過ぎ。
百里基地を出て6時間15分である。駅前のロッテリアでハンバーガーとフライポテト〆て250円分購入。
いつもは買わないファーストフードがこれほど美味しいと感じたことはなかった。
石岡駅前にもファーストフード屋はあったのだが、同じものなら家の近くで落ち着いて食事する方がよい。

ところで後で知ったのだが、16時頃百里を出たバスは何と17時には石岡駅に着いていたとか。
つまり自分の乗ったバスより遅く発車したほうが2時間以上も早かった訳だ。
そういえば基地内で渋滞に嵌った時、後続のバスは1台もなかった。
恐らくバスのルートが複数あって、それがすべて「気紛れ」で運行されていたのだろう。渋滞情報が共有されいていないからバス運行当事者もお客も、またバスの運転手すらも状況を殆ど理解していなかったのかもしれない。
まったくもって恐るべき「百里クオリティー」である。

しかし、それすら「楽しい」思い出と化してしまう「百里基地航空祭」。
この「苦行」に耐えうる体調さえ維持できれば、究極の「自虐テーマパーク」として日本最高の地位を獲得出来るであろう。
是非、お試しあれ。
ただし、すべて自己責任で。

(撮影カメラ/ペンタックスK100・レンズ/シグマ28~300mm<f3.5~6.3>ズーム)

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/