「アベノミクス」の行方

報道
03 /13 2013
「アベノミクス」が何なのかは知らない。
アベさんが持っている複数の初音ミクという意味なのだろうか?
多分違うだろう。

テレビを観ていたら「春闘」で賃上げが好調という。
首相が経営者に「賃上げしろ」と言ったから上がったのだと。
日本はいつから社会主義国になったのかな?

子供の頃、「春闘」は酷く殺伐としていた記憶がある。
「スト権スト」とかで電車が止まり、サラリーマンは会社に泊り込んで、貸し布団屋が儲かったとか、錆が浮いた線路上を早朝から歩いて出勤とか。
そこまでして賃上げの権利を要求した時代は何処に消えたのだろう?

「アベノミクス」でインフレを起こすと言う。
デフレ脱却云々で日本経済を再生させるとか。
インフレもまた懐かしい響きだ。
1960年代の高度成長期、テレビも新聞も雑誌にも「狂乱物価」の字が躍り、このままでは生活が成り立たないという主婦の悲鳴で満ちていた。
あんなにも「ストップ・ザ・インフレ」を呼びかけていたのに、また「インフレを再び」なのか?

経済は右肩上がりに成長していれば自然とインフレになり、右肩下がりであれば自動的にデフレとなるのが世の常。
計画的にインフレなんてそんなものが上手くいった例があるのか?

1960年代の日本は圧倒的に人口比で若年層が多く、自ずと成長エネルギーで溢れていた。
一方で2013年の日本は少子高齢化で若い勤労者は少ない。
今後増えていくのは年金受給者だ。さらにそこに生活保護受給者が加わる。

昨年の生活保護者は史上最高の215万人に達したそうな。
年金受給者と生活保護受給者が増え続ける中でのインフレは素人が考えても著しく歪に感じる。
右肩下がり中でのインフレとは何ぞや?

メディアはアベノミクス効果でインフレが起こって勤労者の賃金が上がるのは日本にとってよい傾向だと囃し立てる。
だが、賃上げなんてものは労働者が生きていくために経営者と闘ってこそ手に入れられるものではなかろうか?
経営者からすれば、雇用した従業員の賃金は少なければ少ないほど良い。
出来れば一銭も払いたくなかろう。
労働者は声を挙げなければこき使われて捨てられるだけの存在。だからストライキなどで必死に闘い、賃上げを獲得するのだ。
もし、労働者が声を挙げなければ経営者は一銭たりとも支払いに応じる事はなかろう。
「労働者は死ぬまでタダ働きさせる」
これがスタンダードな経営者の姿勢だろう。
にも拘らず、「首相に言われたから賃上げする」なんてどう考えても胡散臭い。
多分、「賃上げ」というのはポーズに過ぎない。
ほんの限られた一流企業の一部従業者だけに恩恵を与えて、如何にも「賃上げしました」と装いたいのだろう。

1990年代初頭のバブル経済とその破綻で、日本の中産階級は没落していった。
「地上げ」で失われた地域社会や先祖代々の土地。
戦後、こつこつと積み上げていった「ささやかな富と幸せ」を一気に失った禍のバブル経済。
バブルこそ日本破綻の始まりであったことに論を待たない。

そのバブルを再び引き起こせと?
その結果、辛うじて生き残っている中産階級に止めが刺されるだろう。
インフレで貯金という個人貯蓄に頼っている高齢者層は全滅。
賃上げを要求するエネルギーを持たない少数派の若年層はストライキなんて出来ず、結局搾取の対象とされて今よりも低賃金でこき使われる。
かくして「アベノミクス」はほんの一部の経営者とマネーゲームに長けた怪しげな投資家だけが恩恵に浴すだけで終わるような予感がする。

挙句、日本には貯蓄を失い路頭に迷う高齢者と搾取の限りを尽くされた若い労働者の疲弊で満ち溢れよう。
物価だけが異常に上昇し続け、賃金は限りなく下降。
国民の大半が生活保護を申請しなければ明日の糧すら間々ならなくなろう。
結局、老人と貧民が溢れかえる日本から資産家たちは逃げ出し、国家財政は破綻。
唯一の希望であった生活保護費すら支給はストップし、日本は飢餓列島と化すのである。

こんな災難は真っ平御免だ。
だから今の日本人の本音はこうかもしれぬ。
「デフレの何が悪い?」

「アベノミクス」はかつての「事業仕分け」と似ている。
旧与党が政権をとって間もなく始めたあのパフォーマンスも当時は盛んに持て囃された。
ところが今や見る影もなく、誰一人、口にもしない。

「あべっこラムネ」は美味しいが「アベノミクス」はあまり口にしたいとは思わない。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/