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70年前の忘れられた海戦

日常
02 /25 2012
太平洋戦争緒戦の1942年2月末から3月、当時のオランダ領インド、現在のインドネシア近海で日本帝国海軍と植民地宗主国連合軍混成艦隊との海戦があった。
南方資源確保のため、帝國陸海軍はジャワ方面にも進出。それを阻止せんとオランダやアメリカ、イギリス、オーストラリアの混成艦艇がこの海域で日本海軍と戦闘を交えた。
結果は帝國海軍の完勝で、連合国混成艦隊は殆どが砲雷撃で沈められてしまった。
この地域を長く植民地とし、宗主国として君臨してきた白豪主義国家の艦隊があっけなく壊滅させられた。
これを戦史ではスラバヤ沖海戦、バタビヤ沖海戦という。
ちょうど70年前に、日本がこのような白豪主義国家に圧倒的な軍事的勝利を得た海戦のことなど、今の日本人の殆どが知らないだろう。
多少、戦史に関心のある者でも、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦、マリアナ沖海戦は知っていても、この1942年2月末の赤道直下での植民地解放海戦のことは恐らく記憶に薄い。
「攻撃は最大の防御」という諺どおり、太平洋戦争緒戦の帝國陸海軍は無敵であった。
緻密な作戦、熟練の将兵、整備された兵装で進められた奇襲攻撃は「向かうところ敵なし」だった。
連合国側は十分な戦争の準備もなく、不意をつかれ、一気に壊走した。
この海戦も、連合国側の艦船は質量共に日本海軍と遜色なかったものの、急造の混成艦隊ゆえに指揮も統一せず、情報も補給も間々ならないまま、右往左往しているうちに、逐次日本艦隊に沈められていった。
当時は常にその行動を日本艦隊に掌握されていたから、連合国混成艦隊は全て後手に回らざるを得なかった。
まさに太平洋戦争末期の日本軍のごとき悲劇が、ここでは連合国軍側に起こっていたのだ。
まだ、レーダーも完備されていなかった太平洋戦争緒戦。
熟練した日本艦隊の将兵の優秀さがあったからこその勝利。
情報を制するものが戦いを制すのはいつの時代にも当てはまる。
この時は、日本軍が情報を制していたのだ。
また、当時は戦いにも余裕もあり、撃沈された敵艦の将兵を献身的に救助したりもしている。
日本海軍は英国海軍をモデルにしているので、例え敵味方に分かれてもシーマンシップは発揮されていたのだ。
そんな緒戦の「勝利の逸話」も、日本が太平洋戦争で無条件降伏したことで一切記憶から消去された。
「勝てば官軍、負ければ賊軍」である。
結局、戦争に負ければ全て悪者にされてしまうのだ。

この70年前の「忘れられた海戦」。
この時が、日本の最後の軍事的勝利だった。
以後、70年間、この国は「勝ち戦」を知らない。

まもなく、東日本大震災から1年となる。
津波による原発事故はいわば自然からの「奇襲攻撃」だった。
それに対して、この国の対応は無為無策に等しかった。
「想定外のありえない事象」に右往左往するばかり。
1周年を迎え、事故に適切に対処できなかった事例がいろいろと伝えられている。
未だ、被災地の瓦礫は処理出来ず、放射能に恐れ慄く国民は己可愛さに焼却分担を拒否する。
だが、少なくともこの禍は自分の国で起こったこと。
誰か他の国が助けてくれるとでも思っているのだろうか?
放射能は撒き散らされた。
ではどうするのか?
原発を全て廃止するか?その分火力発電の燃料費による電気料金値上げも拒否するか?
ホルムズ海峡が閉鎖され、石油が輸入出来なくなったらどうするのか?
日本を捨てて海外に逃げるか?
放射能も怖いし、電気代払うのもイヤだし、石油が来なくなるし、だったら中国にでも移住するか?
中国様がそんな「難民」をありがたく受け入れてくれるとは思えないが。
他の国も然り。
日本人ならばこの難局に自らの英知を持ってして対処しなければ、この国は終わってしまう。
そのための犠牲は誰かが払わなくてはならない。
電力会社が悪いんだから自分は責任ないんだと開き直ったところで状況は変わらない。

どこぞの首長が憲法9条があるからダメなんだといった。
本当にそうなのかは知らない。
だが、憲法9条を真摯に実践している日本人は居るか?
否。
そんなのはどこにも居ない。
戦争を本気で放棄するガンジーみたいな聖人君子はこの国には一人も居ない。
用心棒役の進駐軍の裾に縋って調子のいいこと言っているだけだ。
結局、戦争も実践出来ず、無抵抗主義も貫く事が出来ない適当な愚民の集まりでしかないのだ。
原発事故はそれを如実に浮き彫りにした。
逃げ場なんてどこにもないのに難局に立ち向かうのでもなく、ただ自己欺瞞で誤魔化すだけ。
今後、中国が尖閣諸島を占領しに来ても、同じように「想定外だから解りません」として為されるがまま。そして武力行使は用心棒役の進駐軍に丸投げして、日本人同士が責任を擦り合う愚行が繰り返されるだけだろう。
もうそういう国になってしまったんだからどうしようもあるまい。
行き着くところまで行くだけだ。

70年前、赤道直下で行なわれた知られざる日本最後の軍事的勝利。
撃沈された連合軍艦隊の将兵は這い蹲って日本の駆逐艦に泳ぎ着いた。
救助された彼らの大半は本国に無事帰れたという。
「人は強ければ優しくなれる」
だが、今の日本には「強さ」の欠片もない。
だから、人々は同胞の被災者すらも放射能を恐れて疎み遠ざける。
こんな国はいずれ自壊してしまうであろう。

まあ、負け犬は卑屈になるのが世の常。
この国の卑屈さは世界随一だ。
せいぜい自慢するがよかろう。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/