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怒りのバレンタインデー

日常
02 /15 2012
バレンタインデーの夜。
所用で外出からの帰り、最寄り駅の改札を出た時のこと。
駅コンビニの前に警官二人の姿が目に入る。
何かの警戒配備か?
と、思うまもなくこちらに近寄ってくる警官。
「またか。またなのか!」
心の中でうんざりするように呟く自分。
その時の格好はリュックにウエストポーチ。ポーチからはハンディーアマ無線機のアンテナが出ている。
職質される時の定番スタイル。
そう、必ずといってよいほど、まったく十中八九、自分が標的になるのだ!
50人以上改札から出て来たというのに、まるで磁石に吸いつか如く警官が遣って来る。
これまでもあらゆる駅で、街中で同じようなシチュエーションで職務質問のターゲットにされるのだ。
常に何十分の1の確率で!
なぜなのだ!!
これが宝くじなら今頃100兆円長者になっていように。
それ位の確率で警官が寄ってくるのだ!!

例によって、所持品検査を求めてくる警官。
憤怒の気持ちを抑え、その警官に言う。
「なんで自分なんだ?もっと怪しいのが居るだろう?」
すると警官は答える。
「ちょっと千葉のほうで発砲事件がありまして・・」
すかさず返す自分。
「あれとどう関係あるんだ?指名手配の人間とどう比べれば似るんだ?ふざけるな!どうせ点数稼ぎで無抵抗そうなの選んでるだけだろ」
再び警官。
「いえ、そんなことは。それに最近危険なモノを持ち運ぶ人が多いので・・」
それに対して自分。
「危険なもの?俺が危険なもの持っているというのか!もし出てこなかったらどうするんだ!」
とにかく見せろというので、仕方なくリュックを下ろしてファスナーを開ける。
頭に血が上って来たので警官に吐き捨てるように言う。
「いちいち面倒だからここで中身全部ぶちまけましょうか?」
すると警官は「それはいいです」とのたまう。
リュックの次はウエストポーチ。
財布の中より保険証を出して警官に見せ付ける。
「ほら!正真正銘の日本人だ!不正入国者とでも疑ったのか!どうなんだよ!」と大声で警官に向かって怒鳴りつける自分。
無言で所持品検査を進める警官二人。
心の中では憤怒の嵐が逆巻く。
『この無能警官が!点数稼ぎに例によって抵抗出来そうもない柔な単独男性見つけて形式的職質しやがって!駅前で犯罪者扱いするこの屈辱!ウラミハラサデオクベキカ!』
ポーチの中のアマ無線機を見つけ警官が「これはなんですか?」と尋ねる。
「アマチュア無線機ですよ。なんならライセンス見せますか?」
そして従業者免許を提示。
納得したのか無言の警官。
身元照会したいので保険証を貸してくれと警官。
渋々渡すと、一人の警官が警察無線で本庁と交信。
暫くすると確認が取れたらしく、やっと解放される。
怒りに怒りが抑えきれない。
他に幾らでも怪しそうな人間がいるのに敢えて自分のような善良人間をターゲットにするなど許してなるものか!
この無能警官が!
それも1回や2回ではない。
もう何十回も同じパターンで職質される。
余程、この無能警官の写真を撮ってやろうかと思ったが、こんな下らない事でエネルギーを使いたくなかったのでそのまま立ち去る。
こうなったらもっと怪しい格好をしてやろうか?
ナチドイツ武装親衛隊SS下士官制服レプリカにドイツ連邦軍迷彩ジャケット、リュックには軍用無線機にウエストポーチには中田商店で買ったM16の空薬きょう。
これは全て持っているので今すぐにでも用意出来る。
これなら100パーセント無能警官を釣れるな。
このバレンタインデーという日。
デパ地下では女子たちがチョコ売り場に群がってこの世の春を堪能しているというのに、自分はその横で犯罪者のごとく職務質問されている。
同じ格好でもカップルで歩いていれば決して職質の対象にはされないのに。
単独男性ゆえに犯罪者のレッテルを貼られてしまうのである。
結局チョコは一つも得ることなく、代わりに職質だけがこの日のエピソードというのか!
この憤怒の矛先をどこへ向ければよいのか!
今夜の職質で更に己のルサンチマンの炎は高く高く燃え上がった。
あの無能警官が燃料投下したのだ!
この世を怨む積層がまた一つ己の人生に加えられたのだ。
惨めな絶望独身男性をルサンチマンに駆り立てるこの世の所業。
断じて許すまじ。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/