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バレンタインデーに想う

日常
02 /14 2012
最近、伊集院光の深夜ラジオで新しいコーナーが出来た。
くだらない子供用ナゾナゾをシュールな解答にカスタマイズして投稿するコーナー。
その出題者の設定がなかなか一興だ。
演劇を目指して北海道から東京に出てきたものの、現実問題として食っていけず、40代で着ぐるみの中に入り、子供相手にナゾナゾを吹っかけるというキャラクター。
その悲哀がナゾナゾコーナー自体よりも心に突き刺さる。
伊集院がハーモナイザーで声を変調して演じている訳だが、身に沁みる思いだ。

今日はバレンタインデーだ。
先日の日曜日は本命チョコを受け渡す幸せなカップルも見かけた。
一方で、そんなものには一切縁がなさそうなくたびれて襤褸切れみたいな中年男性がスポーツ新聞片手にうろうろしていたり、自分や同性の友達のみのためにチョコを買っている「女子会」風のグループも見かけた。
救いがないなあ。
たとえこの日が、どこかの製菓会社が仕掛けた営業戦略だったとしても、敢えて男と女の絡み合いに加担するのがリアルな世界での嗜みであろう。

異性に縁がない、という人種はこれからの超老齢化人口激減時代においては、もっとも悲惨な階級だ。
専業主婦であろうと、愛人であろうと、2号であろうと、男性との係わり合いを持つことが女性にとっては至上命題。
そんなチャンスの日に、異性にアプローチを行なわないということは、もはや生物の雌として致命的な欠損である。
雄のほうも、この日にアプローチの対象にされないという事は、もはや生きている価値もない。
一人の優秀な雄に1000人くらいの雌が集中する異常な非対称恋愛状況が、この歪な世界を醸し出しているとしても、這い蹲ってチョコを乞うのが雄の定めであり、雌もまた胸を掻き毟らんばかりに目的の雄にチョコを渡すのが女の本道だ。
花輪和一のマンガみたいに男も女も煩悩の中で貪りあわなければ悟りは開かれない。
この期に及んで、異性に縁がないなどと流暢に構えている場合か?
老いはあっという間に遣って来るぞ。
生理は終わり、勃起不全が始まる。
そしてその頃には、周りは生殖不能の単身未婚老人ばかりが徘徊する社会となる。
まさに醜悪にして餓鬼道の世界。
その時に後悔しても、もう遅い。
そんな絶望の日が来る前に、何としても男は雌の子宮に射精し、女は雄の精子を受け入れなければならない。
そのきっかけのチャンスがバレンタインデーである事は論を待たない。

きょうもまた、どこかで痴漢逮捕のニュースが流れる。
電車の中で女性のスカートの中をまさぐって捕まる男たち。
しかし、その行為自体は犯罪としても、それを妄想することは男の性だ。
そして酔った勢いで手を出してしまう気持ちもよく解る。
自分も常に電車の中ではそんな妄想で一杯になるし、もし酔っ払ってしまったら自制出来る自信ははない。
隣に座った可愛い少女のオーバーニーソックスから覗く「絶対領域」に貪りつきたい衝動を押さえるのは至難の業だ。
しかし、そんな衝動をガマンしたところで何になろう。
残された時間は残り少ない。
己の遺伝子を残す行為が可能な日はあと何日あろうか?
女性の肌に触っただけで人生が終わるような時代のほうが間違ってはいないか?

メディアは相変わらず、「女性の自立を促す」主旨の番組で一杯だ。
連続テレビ小説は女性被服デザイナーの立身出世物語である。
もう、こんなものはこの時代においてはどうでもいい。
衣装デザイナーなど夢でもなんでもない。
その気になればデザイナーごっこなど誰でも出来る。自称デザイナーなら誰でも成れてしまう。
ネット上でのバーチャルデザイナーなら一夜にして完成だ。
もっともリアル世界で本格的な職業デザイナーなど、今も昔も稀有な世界に決まっている。
根本からステージが違うのだ。
血筋、縁故、人脈、才能など最初から環境、天性が整っている「選ばれし者」だけの世界。
だから、こんな絶対に99.99998%不可能な「女性の自立自活ドラマ」など百害あって一理もない。
どう転んでも平凡な女子が成就出来る訳ない絵空事。
だからこそ今求められるのは「専業主婦」だ。
「専業主婦」こそ女の王道であり、現代におけるリアル女性の「夢」そのものだ。
男に依存し食わしてもらう。年金の保険料も免除される。子を作れば未来が約束される。
正にこれこそが、この日本女性の理想形ではないか。
メディアはいまこそ、「専業主婦」キャンペーンを展開する時が来た。
愚にも付かない「女性の自立」や「女子会」「女子力を煽る」番組は中止し、専業主婦を目指す番組を作るべきだ。
今、もっとも難しいのが専業主婦への道。
かつてデザイナーになりたいと渇望する対象が逆に専業主婦になっただけ。
正妻が無理なら2号、3号への道だ。
玉の輿への道は険しい。
中産階級が崩壊し「食わしてくれる男」が激減した今、玉の輿への道はデザイナーへの道よりも狭き門だ。
バーチャルな世界でデザイナーごっこはいくらでも出来るが、架空世界で専業主婦は存在しない。
なぜなら専業主婦はリアルな世界でのみ成立する唯一の生きる最良の術だからである。

だから、女も男もバレンタインデーは地に這い蹲っても異性を射止めるチャンスの日にしなければならぬ!
ならぬのだ!
男根が勃起しなくなり、閉経が訪れた日に愕然とする前に何としても未来を手にするのだ。
全裸になって己を曝け出してでも本命チョコを貰い渡せる男と女になるのだ。
それが生きるということではないか?

伊集院光が演ずる40代独身ナゾナゾ男は言う。
「女子会で傷を舐めあう独身アラフォー女子の未来の姿ってなーんだ?」

答えは「後悔と絶望、そして専業主婦に対する嫉妬と怨みを背負った餓鬼道に堕ちた化物」。

それ以外の解答は存在しない。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/