アウトドア用品店を覗く

日常
10 /12 2011
吉祥寺のとあるアウトドアキャンプ登山専門店を覗いてみる。
「山ガール」の資料になるものはないかとパンフを物色するために立ち寄ったのだが。

店に入るとオシャレな山ガール商品がどっさり。
他にトレッキングシューズ、登山、キャンプ用品と所狭しに並んでいる。
それも限りないほどのアイテム数。至れり尽くせりという感じ。
つまりこれだけ多岐にわたる商品を作っても商売として成り立つのは、相当数のユーザーが居るという事だ。
恐るべしアウトドア。
かつては無骨な「山男」御用達の堅苦しいイメージの登山、キャンプアイテムが今やオシャレなレジャーファッションとして生まれ変わっている。
高齢者に加え、若い女性も取り込んで日本の山々はますます阿鼻叫喚となりそうな予感だ。

書籍コーナーにはオシャレ山ガール入門みたいな軽い雑誌と共に、如何に遭難を防ぐかみたいな硬派な本もたくさん置いてある。
とにかく携帯がどこでも繋がるようになったから、多少の事でも110番を入れる傾向があって、遭難件数は鰻登りなんだとか。
山に事故は付き物だから、まあ当たり前なのだが、でもこれだけ登山キャンプ人口が盛り返そうとしている今、遭難事故はこれからも増え続けるのだろう。

でもこの業界にとって、このアウトドア登山ブームは願ったり叶ったり。
中高年に加えて若い女性も山に繰り出す訳だからね。
オクビにも登山の危険を煽って顧客を怖がらせることはしまい。
当然、店内に遭難等のネガティブな部分をイメージさせるディスプレイは微塵もない。

それにしてもなぜ此処にきて若年層までが山に関心を持つまでに至ったのかを考えた時、やはり山は死ぬために登るという暗黙のテーゼがあるからではなかろうか?
敢えて危険な山に入るということは、どこかで死を期待するということでもある。
高齢者は無論のこと、若い女性も出産、子育てを放棄して「自分探し」を模索する中、至る結果はやはり死なのだ。
遥か頂の果ては天国である。
オシャレしながら天国に旅立つのもオツなものと悟ったのではあるまいか。
それが「山ガール」の正体と考えると解りやすい。
本来若い女性が持っていた子育てのためのエネルギーを山登りに変換しているのだから相当なパワーだ。
並の男子より頂上を目指す体力は十分にある。
だから「山ガール」を馬鹿には出来ない。
そこまでして目指しているものはやはり己の命と引き換える何かがあってこそだ。
だからこれらアウトドアスポーツ専門店も登山の危険や遭難の悲惨さを覆い隠すのではなく、如何に大自然の中で己の肉体を捨てて魂を昇華させるかを謳うべきなんじゃないだろうか?

今はオシャレアイテムの一つとして流行しているこのブームもいずれ落ち着こう。
そして「山ガール」の次に来るものは「白骨ガール」とか「ミイラ化ガール」なのかもしれない。
「山登りとは死である」と悟った女性たちは白装束で山を目指す。
カラフルなトレッキングウェアーを脱ぎ捨てて白い布一つで穂高連峰を目指す日が来る。
これからの登山入門書は「安全な山登り」ではなく「オシャレに天国」であろう。
死ぬ事を前提にすれば何も安全を唱える必要はない。
白骨で埋め尽くされたカラサワこそが究極の日本登山ブームの行き着く果てだ。
日本はいつまでも豊かではない。これからは下り坂一辺倒。
そんなときに勃興した登山ブーム。
これは正に日本人の「死」のあり方を模索しているかのようだ。

そんな妄想を抱きつつ、店内を徘徊してみたものの、改めて商品の値札を見てびっくり。
トレッキングシューズだけを見ても軽く1万円は超す。
靴など1000円出しても高いと思っているのに・・だ。
これではとてもアウトドア商品に割くお金はない。

所詮登山やトレッキング、キャンプなど金持ちリア充の嗜みである。
毎月何十万と収入のある「人生の勝ち組」達が己の生い立ちを謳歌するためにあるのだ。
男女カップル用のトレッキングアイテムも用意されているから尚更である。
カップル、家族連れありきの品揃えである。
貧乏人や絶望独身男性には無縁の世界。
そんな「人生の負け組」はお断りの趣味だ。

しかし、貧乏人でも似たような事は出来るぞ。
ホームレスだ。
ホームレスとアウトドアキャンプの差は何処にあるのか?
ブルーシートとテントの差か?
残飯とバーベキューの差か?
いずれは帰るところがあるなしの差か?
否。
つまり、ホームレスは金がなくて止む終えず野宿するのに対し、キャンプは金をかけて敢えて野宿する。
金があるかないかでその差が決まるんだと思う。
アウトドアショップにはキャンプ用品はあってもホームレス用のアイテムは売っていない。
なぜならホームレスにはそのアイテムを買うお金がないからである。
買う金のない者のために商品など扱う店があるか?
だからホームレス用品も扱っていないし、一文無しの「ホームレスガール」はブームにならない。
お金のない人間はアウトドアをする資格がないのだ。
キャンドルランタン一つすら買うことが出来ない自分にとって此処は場違いなのである。
貧乏人はオシャレに遭難する事も出来ない。

それを悟った自分はガックリと頭を垂れて店を出たのだ。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/