生物にとって最高の発明

日常
10 /07 2011
きょうもまたアップル創業者追悼のニュースが多い。
氏が生前、大学卒業式の式辞で語った「ハングリーであれ。馬鹿であれ」という格言も繰り返し流されている。
しかし、自分がこの式辞のなかで最も気に掛かったのはこの言葉ではない。
むしろこれである。

「死は生物にとって最高の発明」
「死は新しいもののための道を開いていく変革の担い手だ」

この部分を大きく取り上げているメディアをまったく聞かない。

このカリスマ創業者は56歳でこの世を去った。
平均寿命としてはかなり短い。
しかし、斬新な発想力を要するクリエーターにとって、この歳はもう限界ともいえる。
仮に、彼がこのまま健康でいたとしても感性は鈍り、これまでどうり人々を驚嘆させる製品を送り出せる保証はない。
むしろ重鎮カリスマゆえに疎われ、やがて「老害」として君臨するだけの厄介な存在に成り果てよう。
だから、ある意味、この歳での死はむしろカリスマとして「適齢期」だったのだろう。
手塚治虫もコミケット代表の米沢氏も大凡鬼籍に入ったのは50代後半だったか。
「偉大なカリスマ」というのは死期も弁えているのである。

このアップル創業者は一説によると日本のことはあまり好きではなかったらしい。
いつ頃からか「マックエキスポジャパン」もなくなってしまったし。
勿論それは偏狭な白豪主義思想等からではないだろう。
モノを売る最高経営者が単なる思想信条で日本を無視するはずがない。
もし、本当に日本を疎んじていたのならば、その理由は明白だ。
「この国には市場として未来がない」とね。

少子高齢化で硬直した日本社会。
かつてはウォークマンなどの斬新な製品で世界市場に君臨した日本の音響通信情報家電機器。
ところが今や見る影もない。
それは決して円高などの外的要因だけでなく、日本人自身の技術力、発想力、経営力、政治力の劣化が招いているといえなくもない。
あらゆる分野で世襲と老化が進み、新しい発想力は軽視され、旧態依然とした既得権だけで世の中が動く。
若い人間が少なくなればたとえ斬新な製品を展開しても市場は広がらない。
その行き詰った国情が日本の凋落を招いていると。

今の日本を支配しているのは、紛れもなく「老害」である。
少子高齢化があらゆるモノを錆付かせ、変革を阻害している。
そんな国に未来はない。
アップルのカリスマ創業者はそれを鋭く見越して、日本を見捨てたのだ。

「死は生物にとって最高の発明」
「死は新しいもののための道を開いていく変革の担い手だ」

この格言こそ、今の日本人が最も深く受け入れるべきテーゼだ。
新しいモノは新しい人間からしか生まれない。
そして更なる新しい世代を造ろうともしない若年層も同罪だ。
「草食系男子」などとレッテルを貼られて喜んでる程度だから「老害」はますます増長し、日本は再生不可能な袋小路へと堕ちて行く。

「ハングリー」にも「馬鹿」にもなれない日本人に明日はない。
新しい世代を造ろうともせず、既得権にすがり付いているだけのこの国に、変革は永遠に起こらない。
やがて中国や韓国、ロシアに飲み込まれ、奴隷として命乞いでもするのだろう。
その程度の存在だから、アップルカリスマ創業者に早々に見放されてしまったのだ。

それも仕方ないと諦めよう。
「生物にとって最高の発明」にすら愛想をつかされた国、日本。
あとは微温湯みたいな先細りの人生の中でゆっくりと破滅するのも一興だろう。
死ぬのは誰でも怖いからね。
ガクガクブルブル。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/