サイボーグのような子役タレントと二十歳プロゴルファー

日常
09 /24 2011
午後、屋根に登って作業。
先日の台風でひん曲がった無線アンテナのエレメントを物干し竿で直そうと試みる。
庭の木が成長しすぎて地上高8mほどのアンテナに覆いかぶさり、台風の風で煽られた枝がエレメントに接触したのが原因。
早めに枝を落とすべきだったが後の祭り。
足場の悪い屋根の上での作業なのでなかなか上手くいかない。
このアンテナは頑丈で建ててから20年経っているにも拘わらず錆も出ず、ガタも来ていない。
そんな頑丈なアンテナのエレメントを曲げてしまう位だから相当な勢いで枝がぶつかったのだろう。
物干し竿で曲がりを直そうとするが頑丈ゆえになかなか元に戻らない。
なんとか7割方戻ったところで作業を終了。性能自体には差ほど影響しないからこのレベルでよしとする。
その作業中ずっと空を見上げていたのだが、上空にはトンボの大群が舞っていた。
高度差をとって何百匹もいた。眺めていると秋の空に吸い込まれそうだ。
毎年の事ながらこのトンボはいったいどこからやってきたのだろう?
アンテナ作業を終えて、枝の伐採へ。
錆付いていた高枝ノコギリを紙ヤスリで削り、錆落としと錆止めスプレーでメンテナンス、いざ枝落とししようとしたが、やはり屋根の上故に足場が悪く、力が入らない。
無理すると屋根から落下する危険性もあったので伐採作業は中断。
結局業者に頼むしかないのか。

作業を終えて部屋に戻る。
適当にテレビをザッピングすると、二十歳になったばかりのプロゴルファーが競技しているゴルフ中継をやっていた。CMにもこの人が出ていて達観した演技力で商品を盛り立てている。
様々なメディアに露出し、もうゴルファーというよりタレントだ。
別のチャンネルに回すと大河ドラマに出演していた女の子子役がインタビューを受けていた。
こちらはまだ10歳にもなっていないのではないか?
二十歳のプロゴルファーもこの子役も受け答えは大人そのもの。
ガチガチの社交辞令で武装し「子供」「児童」の片鱗も見せない。
人生経験乏しい年少者が世間の荒波を全て経験したかのように喋るその姿は「奇妙な造りモノ」にしかみえない。
自分が同じ年齢の時、果たして何をしていたろうか?
8歳頃は毎日がテレビマンガの日々。それしかなかった。「友達」はその一方通行のテレビのみ。コミュニケーション能力マイナス400パーセントで人の顔すらマトモに見れず、人との会話など途方もない事だった。
クラスメートは露骨に人の欠点を論って思いやりの欠片もなく馬鹿にしたり馬鹿にされたりと、自我むき出しで転げまわっていた。
「社交辞令」の「社」の字もない、残酷な子供社会の渦中だった。
子供にとってはそれが当たり前で、その過酷な環境を経て大人へと育っていくものだった。
だがこの子役はそれをすっ飛ばし、幼年期にして35歳くらいの人生経験を積んだの如く達観した喋りで視聴者を圧倒する。
一方、20歳のプロゴルファーも受け答えは全て「優等生」。
若気の至りで口汚く相手を罵るとか、感情をあらわにして悔しがるとかまったくしない。勿論その部分は都合よくカットされているのだろうが、それにしても「出来すぎた二十歳」である。
世の中を呪いつつ、道端に落ちていた「週刊プレイボーイ」のグラビアで毎日5回以上自慰を繰り返し、挙句コタツで転寝、目が覚めて徐にテレビを点けると『鶴ちゃんのプッツン5』が映っていて村西監督のモノマネで笑いを誘うタレントのギャグシーンを眺めつつ貴重な青春の時間を喰い潰していた自分の二十代の頃と比べると、これが同じ人間かとも思う。
もう半世紀以上生きているにも拘わらず、この幼少タレントと成人になったばかりのプロゴルファーの足元にも及ばない己の人間度の低さにガックリとうな垂れるのである。
親の完璧なるプロデュースによって此処まで究極に「完成度」を高められた存在の二人。
サイボーグのような子役タレントと二十歳プロゴルファー。
この先、更なる成長が見込めるかは知らない。
もしかするとこれが絶頂期で終わるのかもしれない。
だとしても、花を咲かせた人生である事に違いはない。
絶頂期の遺産で十分に生きていける「人生の勝利者」だ。
恐らく自分が70、80生きてもこの二人の爪の先すらも咀嚼出来ないままで終わってしまうのだろう。
惨めである。
そんな絶望を感じたホリデーの午後であった。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/