銀河の向こうへはもう行けない

報道
07 /11 2011
先日ネットで、福島原発避難地域に住んでいた93歳の老人が「お墓にひなん」という遺言を残し自殺したというニュースを目にした。
そして、同じ日、最後のスペースシャトルが打ち上げられた。

自分が小学生であった1960年代後半、「原発」と「宇宙船」は未来の象徴だった。
やがてすべてのエネルギー源は原子力に取って代わり、宇宙ロケットが人々を月や火星に運ぶ。
2010年代はそんな「ばら色の未来」が「科学の勝利」によって現実化すると信じて疑わなかった。
科学の子である「鉄腕アトム」も原子力が動力源だ。
「原子力」と「宇宙船」なしには21世紀は語れない。
しかし、その両方が今や風前の灯火に成りつつあるとは誰が予想したか?
現実の2010年、アメリカは有人飛行可能な宇宙船を放棄し、月はおろか地球周回軌道すら自前で行くことが出来なくなった。
そしてドイツは原子力発電撤退を表明、日本も現状では来年辺りになると全ての原発が停止するという。
「原子力」と「宇宙船」で担保付けられた「ばら色の未来」はどこへ行ってしまうのだ?
このままでは子供時代に夢想した21世紀は目の前で霧散してしまう。

「原子力」も「宇宙船」もない21世紀。
唯一飛べる有人宇宙船は1950年代に原型が作られたソユーズだけなんて何かの冗談か?
自分が生まれる前の代物だぞ。
そんな「骨董品」が2010年唯一の宇宙船だなんて。
40年前に予想したら失笑されてしまうだろう。
こんな「お笑い種」の21世紀を誰が作ったのだ?

宇宙へ旅立つ船を放棄し、原子の火も放棄する。
そんな21世紀に希望はない。

昔、1970年代前半、上条恒彦が歌っていた『出発の歌』という曲があった。


乾いた空を 見上げているのは
誰だ
おまえの目に 焼き付いたものは
化石の街
愛のかたちが壊れた時に
残されたものは出発の歌
さあ今 銀河の向こうに
飛んで行け

乾いた空を 見上げているのは
誰だ
おまえの耳を ふさがせたものは
時計の森
自由な日々が失われた時に
残されたものは出発の歌
さあ今 銀河の向こうに
飛んで行け

さあ今 宇宙に
さあ今 未来に
さあ今 宇宙に
さあ今 未来に
飛んで行け


子供の頃、これを聴いたとき、「嗚呼、希望が失われた時は宇宙に旅立てばいいのだ」と感慨深く想ったものだ。
しかし、今、もはやその宇宙船すら失われつつある。
旅立てる手立てはもはや存在しないのだ。

この絶望の日々、唯一避難できる場所は、やはり「お墓」しかないのだろうか?

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/