震災から1ヶ月

地震、火山、気象、自然災害
04 /11 2011
東日本大震災から1ヶ月。
規模のスケールゆえ、未だ巷の話題は震災中心に動く。
福島原発は収拾のメドは立たず、ネットでは最悪の状況を煽り立てる流れも収まらない。
動画サイトには新たに津波の状況を撮影した貴重な映像がアップされ続けているようだ。
これらを再生する度に、如何に今回の事象が尋常なレベルではなかったかを改めて思い知らされる。
これは気仙沼市の様子。

撮影者が途中で漏らす「なんなんだ。これは?」という呟き。
それ以外にどう表現していいか解らぬ光景。
ほんの数分前まで普通の町並だったところが、一瞬にして濁流渦巻く「海」になってしまうのだ。
ほんの数分で、である。
現実には「ありえない」はずの現象が目の前で起こっているのだ。
「なんなんだ。これは?」以外に如何なる言葉がみつかるというのか。

まるで箱庭のジオラマ造りに飽きた子供が泥水をぶっかけて大洪水に戯れるかのごとき光景がリアルスケールで展開されているのだ。
1ヶ月過ぎてもまだ、この「現実」を咀嚼しきれていない日本人は多い。
そんな「非現実的事象」が3月11日以降の日本全体を侵食し続けている。
当日の直接的衝撃波のみならず、余震や停電、物資不足、原発事故の放射能がじわじわとこの国を溶かし始めた。
物理的損害だけではなく、精神的な安定面でも、もはや3月11日以前の「日常」には帰れないのだ。
震災は、ある意味尚も継続中と言ってよい。
特に福島第一原発事故は、まだ現在進行中であって、むしろ現状はまだ「第一ステージ」でしかないのかもしれぬ。
だが今更「最悪の状況」に怯え、右往左往したところでどうしようもあるまい。
首都圏から脱出したからといって「現状維持」の生活を保てる保障はどこにもない。
仮に西日本に移転しても東京での生活水準を満たせる居住環境、仕事、資産を確保出来る者などどれだけいるか?
相当な資産家位のもの。仕事を失っても尚、年収数千万円が保障されていて、尚且つ世界中に人脈を有するステイタスがない限り、「避難先での優雅な生活」は保障されない。
まあ、そういう「選ばれし日本人」は最初から東京に固執する必要もないのだがね。
遅かれ早かれ「海外脱出」だ。
ましてやその他大多数の首都圏住民に彼らのような「優雅な仮住まい」の場など望むべくもない。
仮に東京脱出を果たしても、悲惨な避難生活が待っていよう。
職を失い、安らぎの家もなく、プライベート空間を保てない狭い避難所でストレスを溜め込む日々が待っている。
たとえ関西方面に親族がいたとしても悲惨な状況に変わりはない。
やがて「居候」先の親族から迷惑がられ、そのうち厄介払いを促される。
高畑勲のアニメ『火垂るの墓』に出てきた「西宮のおばさん」みたいにイヤミを言われつつ、肩身の狭い生活を強いられるのだ。

こんなふうに。
「放射能汚染の東京に住み続けるのは気の毒やと思って最初は優しく迎えてやったけど、いつまで居候する気やねん。関西にとってはいい迷惑や。仕事もせんヒバクシャを泊めるほど家には余裕あらへんのやで。関東人は放射能被ってやはるからこっちまで被曝するんやないかとビクビクや。いつまでおるつもりなんやろね?たいがいにせいや!」
こんなあからさまな差別も公然と始まるだろう。
結局、避難資金も尽きれば、おずおずと元の首都圏に帰らざるを得ない。
国が1000万人余の避難費用を立て替えてくれると思ったら大きな間違いだ。国庫は赤字だらけなのだからね。全部自己負担だ。
だったら、最初から逃げる事なんか考えず、開き直って東京に住み続けるほうがよっぽどマシというものだ。
自分の愛読書の中にネビル・シュート著『渚にて』というSF小説がある。
これを読めば放射能で汚染された大地で最後を迎える時のよい手本になるからお勧めである。
逃げる暇があったら、この本を読んでおくほうがよっぽど身のためになろう。

じたばたしたところで結局人はいつか死ぬのである。
今回の事象もポジティブに考える事だ。
これが「地球の意志」ならば素直に受け入れようではないか。
地球の大地から生まれたホモサピエンスが核エネルギーを見出した。そしてその人類が核エネルギーのコントロールを喪失し、大地を汚染したとしても、結局それ自体「地球の意志」の一つ、「アカシックレコード」の1ページなのだ。
地球生物進化の一過程、通過儀礼と考えればまんざらでもない。

地球生物は大地開闢以来、何回となく「大量絶滅」を繰り返してきた。
そしてその度に「進化」を獲得した。
古きものが淘汰され、新しい存在に生まれ変わる。
「大量絶滅」の原因は様々だったが、今回は「人」が作り出した核エネルギーが引き金だったというだけ。
理由としても何ら不自然ではない。
その放射線による突然変異で脳の容量が倍増された「スーパーブレイン人類」が生まれるかもしれない。腕が三つの「多機能人類」や放射能耐性を有する「アトミック人類」とか。
新たな人類の夜明けである。
これらニュータイプが未来に向けて文明を築くとしたら、我々「旧人類」は喜んで「滅びの通過儀礼」を受け入れようではないか。
恐竜が鳥に進化したのも、もしかすると巨大隕石に含まれた放射性物質が引き金になったのかもしれないのだから。
何事も前向きに考えることである。


あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/