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賢者の選択肢

地震、火山、気象、自然災害
03 /16 2011
震災から5日。
終わる事のない「カタストロフ映画」の中に居るようで、圧迫感や不安感は寧ろ直後よりも今のほうが大きい。
余震、原発クライシス、時差停電。
自分の住んでいるところは幸い今のところ停電はないようだが、いつ送電が止まるか解らない。
物理的な破壊もなかったし、ライフラインも生きている。
にも拘らず、この圧迫感はなんだ?
その理由の一つは情報過多かも知れない。
旧来の新聞、ラジオ、テレビに加え、ネット、携帯から様々な情報が怒涛のように流れ込んでくる。
その全てが正しいわけではないが、たとえ正しいとしても「知る必要のない」情報まで入ってくるから、自分の中で処理しきれずオーバーフローして不安が募る。
こと原発情報はテレビで殊更不安を煽る解説者によってパニックを誘発しかねない勢い。
こういう人間は普段から原発が如何に危険なものかを発っせねば気がすまないのだろう。
科学的データーに見合っているかは解らない。
だが現実の事象において此処に至って危機を煽って何になる?
危険エリアに居る視聴者が知りたいのは如何にして危機的現状を回避するかの情報であって、誰の責任だとか「こんなに原発は危険なのだ」とかそんなのはどうでもいいのだ。
状況をわきまえない解説者の無神経さには腹が立つ。
更にそれに付随したネットの有象無象の情報が不安を駆り立て焦燥させる。
新型インフルエンザの時もまるで不治の病が感染するかのごとく流布したパターンと同じ。
それに煽られ、街中がマスクだらけになった。
これらを全て真に受けていたら神経が持たぬ。
余震が続く中、東京脱出を急かされるの如く己を失いそうだ。
此処に至って悟ったのは、逐一出してくるセンセーショナルな原発情報を相手にしてはいけないと言う事。
「情報開示を早く」とかマスコミは騒ぐ。
しかし詳細がよく解らない事象を、さも「破滅的状況が進んでいる」のごとく速報するのはどうかしている。
マスコミはパニックを誘発したいのか?
かつて、1950年~60年代、超大国が大気圏内核実験を日常茶飯事に行なっていた頃は、様々な放射線物質が日本列島に落下していた。
そんな中で皆、普通に暮らしていたのだ。
当時、国内のフィルム工場のエピソードでこんなのがあった。
核実験で齎された放射性物質が暗室の中に紛れ込んで僅かな光を放ち、商品が感光してしまい困ったらしい。それを取り除く作業が面倒だったと。
これだってかなりの放射線を出していたんだろう。だからといってこの人が健康を阻害した訳でもない。
それと比べたら、現状では似たり寄ったりだ。
あの馬鹿みたいに危険をあおる解説者のアジテーション通り、東京で被曝し健康を害する確率と、東京脱出を謀ってその疎開先で交通事故に合う確率を比べたら余程後者のほうが高かろう。
情報を正しく精査する能力に欠けた政府の無能ぶりがマスコミを増長させ、そのソースを元にネットが騒ぐ。
この悪循環に飲み込まれたらおしまいだ。
それこそ津波に呑まれるのと同じ悲劇。
インフラ、物流、治安、行政に拘わる者がこの首都から逃げ出したらどうなる?
首都機能は失われ、日本は瓦解する。
どこぞの都知事が「今回の大津波は私欲に駆られた日本人に対する天罰だ」とのたまわったと聞くが、むしろこの期に及び、職務を放棄し首都から逃げ出す輩の群れが「私欲に駆られた日本人」そのものだとしたらまさに言い得て妙かもしれぬ。
そんな連中がパニックの「大津波」に飲まれて死んでいくのならば強ちこの発言は的外れではなかろう。
散々原発の恩恵に与ったくせに、この期に及んで逃げ出せば、そりゃ神様も黙ってはいまい。
もっとも張本人がその「私欲の群れ」の一員として罰を受けるやもしれぬが。

いずれにしろ三陸の津波避難と東京脱出とはスケールが違う。
1千万人を収容する避難所なんて存在しないのだ。

今、為すべきは非現実的な状況を煽っているマスコミ報道やネット情報を己から切り離す事。
テレビを消し、ネットも断ち、職務に勤しみ、ラジオから最小限の情報を得て冷静を保つ事だ。
それが賢者の選択肢というものだろう。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/