40余年目にして観るテレビまんが『サスケ』

アニメ
01 /14 2011
ふとしたきっかけで、40年以上前のテレビアニメ『サスケ』を観る。
思わず魅入ってしまった。

白土三平原作のこのアニメは1968年から1969年に掛けて地上波民放テレビで放映されていた。
日本が高度成長期の真っ只中にいた「猛烈な時代」の産物。
過激で残酷なシーンが普通に描写されていて、尚且つゴールデンタイムのお茶の間に放映されていたという、今では到底考えられない「テレビまんが」作品。因みに提供は森永製菓。
にも拘らず、普通に観れるのは描写がデフォルメされたシンプルな絵というのもその理由だったのか。
もっとも、この時代はドラマにしろマンガにしろ、残酷シーンは珍しくなかった。
ベトナム戦争の凄惨な写真がグラフ誌に日常茶飯事の如く掲載されていた訳で、時代としてはこれがノーマルだったのだろう。反体制の落人が主人公というのも当時の人気時代劇『木枯らし紋次郎』を例に挙げるまでもなく、安保闘争の影響を強く受けていたと推測される。

それはさておき、この『サスケ』であるが、オープニングとエンディングは記憶にあったのだが、本編はまったく覚えていない。
何回も再放送されて観た機会はあったはずなのに不思議である。
今見ると、人が普通にあっけなく死ぬシーンがたくさんあって、それが妙に教訓的で心を打つ。
当時、まだ小学生だった自分にはそのようなシーンが何を意味するかなんて恐らく理解出来なかったはずなのだが、もしかすると深層心理の中で無意識に植えつけられていたのかもしれない。
『サスケ』に限らず、この頃のテレビまんが(敢えてアニメとは言わない)は得てしてマザーコンプレックスやシスターコンプレックスの少年が主人公である場合が多く、なんだか知らないけれどその影響だろうか「まだ見ぬ美しい姉」に憧れを抱いたりした。
女兄弟が居なかったので尚更「妄想」が増幅されたような記憶がある。

あと、今更ながら白土三平の洗練された絵には圧倒される。
実は白土三平の漫画は殆ど読んだ事がない。白土三平どころが小学生時代は漫画はおろか、読書自体まったくしない極端な「テレビっ子」少年だった。
一日8時間くらいテレビの前に居た記憶がある。
テレビまんがは食い入るように観ていたのに、何故か紙媒体の漫画は殆ど読まなかったので白土三平も知らなかった。
ただ、どこかで見かけた忍者連作漫画の中に妙に記憶に残る作品があり、それが後に白土三平の漫画であったのを悟る。
だから白土の名を知らなくとも「凄い作品」を描いていた人という認識だけはあったのだろう。

いずれにしろ、1960年代後半に作られた数多の漫画、アニメに籠められたメッセージを理解出来る様になったのは、初放映時からかなりの時間を経てのこと。
たとえば『太陽の王子ホルスの大冒険』にしろ、封切された時にはその存在すら知らず、実際初めて観たのは1980年だった。自分が大学生になってやっとその作品の「偉大さ」を認識できたのである。
たとえ封切りされた1968年に観る機会があったとしても小学生だった自分には、その作品に籠められたメッセージを「消化」出来たとは思えない。

そういう意味では『サスケ』も五十路を超えた今だからこそ、理解出来る「テレビまんが」だったのだ。
40年以上寝かして得られる「芳醇」さは、まさにワインのごとしである。
にしても、今見て改めて認識するのは主人公サスケの可愛らしさ、凛々しさだ。
たかが、昭和40年代テレビまんがの主人公なのにこの健気さは如何なる事だ?
シンプルで単純な線で描かれているにも拘わらず、この「色気」は何だろう?
やはり原作の白土三平がこのサスケに籠めた強烈な情念あってこそか?
オープニングもカッコいいし、エンディングもスタイリッシュ。
オープニングの台詞は胸を打つ。

光あるところに影がある。
まこと栄光の陰に数知れぬ忍者の姿があった。
命を賭けて歴史を作った影の男たち。
だが人よ、名を問うなかれ。
闇に生まれ闇に消える、それが忍者のさだめなのだ。


うーむ。これは忍者に限らず、漫画家にも当てはまるな。
恐ろしい。

それはさておき、ストーリーも無駄がなくストレート。ストレート過ぎて突っ込みどころも満載なのだが、そんな細かいところはどうでもいいのだ。
敵役として何話かに登場する鬼姫もいい。
今で言う「ツンデレ」娘の元祖だ。
この当時、描かれる子供は「子供」以外のナニモノでもない。
子供の無邪気さ、残酷性を躊躇なく描いている。変に大人びて描いていないところも新鮮だ。
集団で大人をいじめたり、殺したり、殺されたりと容赦ない。か弱い動物もあっけなくバラバラになる。
鬼姫との対決も、昨今描かれるような「大人の代理戦争」みたいなものじゃなく、純粋な「子供のけんか」レベルであるから逆に生々しい。
女は「母」であり、男は「父」であり、子供は「子供」なのだ。
それ以外のナニモノでもなく、大人も子供も男も女も生きるための「通過儀礼」に闘争する。
強いものは生き延び、弱いものは死ぬ。
それだけだ。
特に子供の死はあっけなく、美しい。
原作の何巻目かの表紙にサスケそっくりの従兄弟の一人が猟師に胸を撃たれて死ぬシーンの絵があったのだが、それが妙に美しいのだ。
白土三平が抱く「死の美学」かどうかは知らぬが、ここまで描ける環境がこの時代にあったのだ。

初放映から40余年目にして、初めてサスケと鬼姫を落書きしてみる。
拙い腕で情けなくなるが、やっぱりサスケは可愛い。
サスケ01色 サスケ02色

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/