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セイタカアワダチソウの黄色い花

日常
10 /27 2010
先日、多摩川を渡る橋から河川敷を眺めると、黄色い花がやたら目立っていた。
あの植物は何だろうと調べてみるとどうやらセイタカアワダチソウらしい。
DSCN0620a.jpg
戦後、空き地などに猛烈に繁殖した外来植物だ。進駐軍の物資に付着して日本中に広まったらしい。
一時期は数メートルにまで成長するほどの勢いがあったらしいが、最近はそれ程でもないとか。
どうやらセイタカアワダチソウに適した地下の養分を殆ど使い果たしてしまったのが原因とか。
嘗て日本の原野や耕作地に普遍的に居たモグラやネズミが溜め込んだ養分はセイタカアワダチソウにとって最適だったらしく、それが日本での大繁殖に繋がったんだそうである。
しかしそのモグラやネズミが駆除されたため、養分が補給されず、必然的にセイタカアワダチソウの勢力も衰えていったらしい。

昨今、外来種による固有種の危機が叫ばれて国際会議も開かれている。
人間が経済活動などで持ち込んだものが、その土地に適応し繁殖して、旧来からある固有種のテリトリーを脅かしたり、捕食されたり、また交雑によって絶滅の危機に瀕しているという。
生物多様性が失われる事は地球生物圏の危機であると。

だが、セイタカアワダチソウの大群を見て思うに、これはいわいる弱肉強食という生物進化の必然であって、何人もその「掟」を止めることは出来ないのではないのかと。
人間が持ち込んだというが、人間だって「自然」の一部なのであり、人間活動を利用して勢力を広げようとする生物の知恵もまた「自然」な営みの一つだ。
外来生物を駆除するといっても、そもそもこの日本列島に限って考えても、大半の動植物は過去、海外から侵入してきた生物だ。
日本人自身もまた「渡来人」として縄文人しかいなかった土地に侵入して弥生人となり農耕を始めて、この列島に「文明」を築いていったのだ。
極端な話、もし縄文人が純粋な「日本人」であるならばその「固有種」を守るために「渡来人」を駆除しなければならなくなる。
果たしてこれが正しい行いなのか?
仮にそれを実践したとして、未来永劫、縄文人の血統と文化が守られたとしてもこの2010年になってもなお、日本列島には数万程度の縄文人が狩りと狩猟で生き延びているだけだ。
1億何千万もの人間が科学技術を駆使して近代文明を築き営む未来は永遠に訪れなかったろう。
縄文人と渡来人が交配し、より進化したからこそ、今の日本が存在する事実は否定出来まい。

生物の進化なるものは単純な過程では説明し得ない。
かつてこの地球では何回も生物大絶滅が繰り返されてきた。9割方の生物種が絶滅した事すらあった。
しかしその度に、生物は新しい革新的な構造を手にして新たな進化を獲得していったのだ。
だから今日の人間活動における「大絶滅」ももしかすると次の新たなる進化のための「序章」なのかも知れぬ。

セイタカアワダチソウは、一時期は在来種を追いやって一大勢力を有したが、その武器であった他種を抑制する分泌物で自ら「自家中毒」になったり、養分の枯渇で次第にテリトリーを失いつつあるという。
逆にセイタカアワダチソウの枯れた苗床を利用し旧来のススキなどが勢力を盛り返しているとか。
「進化の行き着くところは自滅だ」とどこかのアニメの台詞にもあったが、幾ら大繁殖しようとその単一性ゆえに病気に弱くなり、一気に滅びたりするのが「生き物の掟」なのだ。
固有種を守るということは、同時にその脆弱性を放置するという事だ。
在来種と外来種が交配し、より新しく強い存在が生き残る。
その「掟」に逆らう事は決して出来ない。

セイタカアワダチソウのギトギトした黄色い花はその異常なまでの生存能力を誇示しているかのようだ。
放棄された耕作地、洪水で荒れ果てた河川敷、地上げされた更地。
そんな在来種が刈り取られた「忌まわしい死の土地」に彼らは必ずといってよいほど貪欲に侵入し、おぞましいほどの「帝国」を築き上げた。
彼らは言う。
「お前らが破壊した無残な大地に進出して何が悪い。お前らの破壊が我らの大繁栄を生んだのだ!
見よ!この黄色い華はお前ら日本人の恥の色だ!ぐへへへへ」

しかし、そんなセイタカアワダチソウもいずれは在来種との「生存のための闘争」の末、その身体を放棄し進化のためにメタモルフォーゼを選択する運命が待っている。
数百年後、この多摩川河川敷には見たこともない新たな植物相が出現しているだろう。
「ナウシカ」に出てきた「腐海」のようにね。
その時「日本人」は存在しているだろうか?


あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/