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『借り暮らしのアリエッティー』監督を取り上げた番組を観る

アニメ
08 /11 2010
先日、NHKで現在公開中のジブリ映画『借り暮らしのアリエッティー』を担当した若手監督密着レポートみたいな番組をやっていたので観る。
宮崎駿氏の後継者育成みたいな視点から捉えた構成。
演出がどの程度入っているか定かでないが、額面どおり受け止めて見た限り、なんだか監督というよりも宮崎駿氏の「下請け」責任者というイメージで痛々しかった。

もはやジブリそのものがブランド化している訳でジブリ=「宮崎アニメ」なのである。
だから、宮崎氏以外の人が監督をやったとしても結局は「宮崎アニメ」を踏襲しなくてはいけない。
いわば、宮崎駿氏のイエスマンとして忠実に動かねばジブリに在籍している意味がない。
今回、宮崎氏はあまり口を出さず、この新人監督に任せたというが、ジブリに居る限り、たとえ総本山が口を出さなくとも「無言の圧力」で「宮崎アニメ」を忠実に描かねばならないのだろう。
その「無言の圧力」でこの新人監督はほとほと参っているようで、見ていて痛々しかった。

だが、宮崎アニメブランドがこれだけ確立した以上、この作風を維持することは重要だ。
ジブリスタッフにとって最大の使命は「宮崎アニメ」を如何に忠実に継承していくかのみである。
たとえ宮崎駿氏がこの世を去ったとしても、このブランドは死守しなければならぬ。
だから、この新人監督もそのためにのみに全精力を尽くす。
命をすり減らしてでも「滅私ジブリ奉公」しなければならなかった。

誰が「2代目宮崎駿」を襲名するのか解らないが、ジブリはやがて能や歌舞伎と同じく日本の伝統芸としての道を歩む宿命なのだ。
動き、情感、カット割り、キャラクター設定他ありとあらゆる「宮崎アニメ」的手法が明文化され、寸分違わずそれを未来に継承することがジブリの使命なのだ。
「サザエさん」と同じく、原作者がこの世を去っても継承していかねばいけないものがある。

それにしても、宮崎駿氏は元気だ。
後継者の方が先に鬼籍に入るほどのバイタリティーはどこからくるのか?
いや、若い世代があまりにも脆弱すぎるのか?
『借り暮らしのアリエッティー』の監督も独身なのか?
家族や妻や子の話はまったく出てこない。
やはり妻子を持たぬ男子は生命力が弱いのだろう。
団塊の世代が持つ卑しいほどの生への執着がないと、ジブリ後継者は宮崎氏よりも先にばたばた死んでいくばかり。
だけどそんな生命力旺盛なアニメーターは、おそらく宮崎駿氏が君臨する下で仕事しようなんて思わないかも。
ジブリの中で宮崎色に染まるだけなんて面白くないだろうしね。
でもそんな血気盛んなアニメーターがジブリと競うように創作できる環境が、今の日本アニメ界にあるという話は聞かない。
総てにおいてどことなく元気も覇気もないまま。
薄給の中でのた打ち回るうめき声しか聞こえてこない。

今回の新人監督のようにどこか弱弱しく、痛々しい姿は、日本アニメ界の将来をみるようで辛い。
彼もあと何年生きられるだろうか?
頑張って欲しい。

でもジブリで監督を担当し、こうしてNHKテレビで密着レポートまで取り上げられた時点で彼の人生は成功したも同然。
たとえ「宮崎アニメ」踏襲作品だとしても、多くの人に自分の作品を見てもらえたのだからクリエーターとして本望だ。
これで死んでも思い残す事はなかろう。

羨ましい限りである。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/