選挙に行く

報道
07 /12 2010
雨の中、近所の中学校へ投票に行く。
比例区とか東京選挙区とかややこしい。昔は全国区というのがあって青島幸男が当選して・・という感覚が残っているから馴染めない。
取りあえず入れたのは漫画表現規制に反対している候補者と党。
自分の表現活動に直接影響するから他人事ではない。
だが、漫画の表現規制の有無など選挙の争点になっていないし、一般の有権者からすればどうでもよい事だ。
「ヲタク票」なるものがどれ程の影響力を持つかは知らない。
だが、開票の状況を見るにつけ、「ヲタク」が著しく存在感を発揮した様子は覗えない。
これほどネットで議論が沸騰しているにも拘らず、規制反対派候補や党が躍進しているとか、規制推進派が尽く落選とか、まったくそのような流れは見られない。
「ヲタク」なる有権者は実際、大した影響力を持たないのか?
単に投票所に赴かなかったのか、はたまたそもそも「ヲタク票」なるものは国勢に影響を与えるほどの存在ではないのか?
どこかの党の比例区に漫画表現規制を推進する弁護士の候補がいるという。
だがこの候補者がそのような政策を掲げて立候補しているという事実を一般の有権者はどれだけ知っているのか?
いや、殆ど9割9分知らないだろう。
なぜならそんなことをマスコミは一切伝えていないから。
知っているのはネットから頻繁に情報を得ている僅かの者だけで、大多数の高齢有権者はそんな事まったく知らないのだ。
また、仮に知ったところで漫画表現規制に反対だからこの候補者に投票しないとなるだろうか?
否。
そんなことはない。
一般の有権者からすれば「いたいけな青少年から過激な性表現が描かれている漫画やアニメを規制」することに疑問を挟む者は少ないだろう。
寧ろ、高齢有権者からすれば賛成する者も少なくあるまい。
結局のところ、どう足掻いても漫画表現規制を阻むことは難しいのだ。
国勢に関与出来るほど「ヲタク」有権者は多くないし、事実、選挙結果にはまったく反映されていない。
また、仮に「規制反対派」の候補者や党が優勢になったとしても、本当に「規制反対」を貫けるのか甚だ疑問だ。
宮崎勤事件と似たような事例が仮に発生したとして、マスコミが世論操作みたいな事をすれば規制賛成派が勢いづくことは間違いない。
「規制反対」派であるはずの政党や候補者も世論の声を無視出来なくなって規制賛成に寝返るということも十分に予想される。
結局あっという間に、規制強化条例が成立する。
規制推進派はいつでも「世論」を味方に付けることが出来るが、規制反対派にとって「世論」は常に逆風なのだ。

おそらく、この流れを止めることは出来ないかもしれない。
寧ろ、現時点で規制強化条例が通っていない事のほうが奇蹟みたいなものだ。
時代はあらゆる事象が萎縮し、表現の自由よりも日々の安全を優先させる。
遅かれ早かれ「表現の自由」なんて言葉は死語になろう。
焚書も日常茶飯事になろう。

以前にも記したが、日本のアニメ漫画などのコンテンツ産業が将来の基幹産業として明確に位置づける政党が出てこない限り、自分たちの未来はないといってよい。
コンテンツが基幹産業となれば膨大なお金が流れ込み、政治家も無視出来なくなる。
当然、そこに既得権益が生れるから政治家にとっては美味しい。
その権益を阻害するような「表現規制」などを叫ぶ政治家は一切居なくなろう。
テレビも新聞もネガティブな報道は一切しなくなるのは間違いない。
賭博で何万人が不幸になろうともパチンコ産業に不利な報道はされないし、銃で何万人が命を落そうと全米ライフル協会がある限り、銃の所持はアメリカ市民の権利だ。
それと同じ事。
漫画家やアニメ、ゲームに携わる創作者が今後生き残るには己の権益を国家レベルにステージアップするしかない。
この方策以外に未来はありえない。

だが、今回の選挙でも雨後の筍の如く現れた新党にコンテンツを基幹産業に掲げマニフェストに取り入れた政党はあったか?
否!どこにもない。
既成政党にも新しい政党にもだ!
結局、「ヲタク」なる存在は自国の政党政治にまったく関与出来ないままなのだ。
この時期に及んでも、自分たちの未来を託せる政党や政治家はどこにもいないのだ。
誰一人!

情報革命が進み、ネットや携帯でコミュニケーションすることがスタンダードになりつつある今日。
にも拘らず、未だに選挙は自分の足で投票所に赴き、鉛筆で候補者を書いて投票箱に票を投じる。
また選挙活動も旧態依然の街頭演説や縁故が主流。
この形態が続く限り、「ヲタク」の声を国政に届ける事は出来ない。
永遠に!
自分たちの「声」を国政に反映させる代議士も政党もどこにもいないという事実。
既成政党から分裂してきた政治家も殆どは「規制強化」に賛成の輩ばかりが目立つ。
己の味方はどこにも居ないのだ。
どこにもね。
投票に値する候補者が皆無なのだ。
このことを真摯に考えない限り、「表現規制」のうねりを止めることなど不可能だろう。

いずれにせよ、既成政党に「表現規制」云々を託すしかない現実はこの上なく不幸である。
彼らの大半は日本のコンテンツを「ポンチ絵」程度にしか認識していないのだからね。
国家運営の手段として位置づけられる政治家が出てこない限り「ヲタク」の存在や主張はいつまでたっても世論に反映されないままだ。

希望はどこにもない。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/