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新宿御苑のソメイヨシノ

日常
04 /06 2010
新宿御苑にソメイヨシノを見に行く。
毎年、この時期になると新宿御苑の桜を眺めに行く。ここ数年習慣になっていて行かないと妙に気が治まらない。
今年の花見シーズンは雨風や真冬のような日が多く、なかなかゆっくり観て回ることが出来ない。
やっとこの日、暖かく穏やかな晴天に恵まれたので新宿御苑に足を運ぶ。
場所柄平日でも凄い人の数。
アルコール類は原則持込禁止なので派手な酔っ払いもおらず、落ち着いて観覧出来るのがいい。
満開のソメイヨシノは風が吹くと花びらを散らし始めるのでこの日が恐らく今年最後の「花見日和」だ。
年々目立つのは外国人。邦人と思ったらハングルや中国語を話している。白人系も目立つ。
「郷に入れば郷に従え」の諺か、桜に対する反応は日本人と変わらない。
午後の陽に照らされた満開のソメイヨシノは毎年見ているにも拘わらず、その妖艶さに圧倒される。
DSCN9832a.jpg
花見を毎年楽しめるのも取りあえず五体満足である証だ。
誰に頼るのでもなく、一人で新宿御苑に足を運べるのだ。
しかし、人は歳と共に心身は衰え始め、言うことを利かなくなる。
生まれて半世紀余。まだ何とか体は動き、生きる意欲は差ほど低下していない。
しかし、今後はどうなっていくか?
すでに老眼は始まり、近くのものを見るのはめがねをはずさねばならぬ。
まだその程度はよかろう。
様々な機能の低下が己の人生に不安を少しづつ植えつけていく。
人間、摂食と排泄が自分で出来なくなった時が「人生の終わり」だ。
そこまで至らなくとも精力減退とか、勃起不全とか洒落にならない位の衰えが否応なしにやってくる。
若い頃は88mm対戦車砲の如く、鋼甲弾を勢いよく発射し、分厚い装甲をいとも簡単にぶち抜けていたのに、気が付くと37mm対戦車砲のように軽戦車すら撃ち抜けない己の主砲に愕然とするのだ。
意欲があっても、それを行使出来ぬもどかしさが、やがて人生を絶望へと誘う。
妻も娶れず、子も設けられないまま、我が主砲は目的を達せられることなく、朽ち果てようとしている。
レイテ沖海戦シブヤン海の戦艦武蔵のごとく。
人生の敗戦。
そんな言葉が脳裏を過ぎり、ガクガクブルブルする。
すでに己の人生は花吹雪のごとく散りゆくあるのか?
恐ろしい。
レジャーシートの上でいちゃつくカップルや幸せそうな家族連れ、隠居人生を楽しむ高齢者のグループ。
そんな「成就」しつつある花見客に比べ、己のような絶望独身男性は華開かずして枝から落ちる蕾みのようだ。
すると、花吹雪として見事散るまでにも至っていないのか。
嗚呼、惨めなりわが人生。

来年も新宿御苑でこのソメイヨシノを見ることが出来るだろうか?

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/