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「パンズ・ラビリンス」という映画

映像鑑賞
03 /13 2010
「パンズ・ラビリンス」という映画を観た。
最近は、殆ど新しい映画というものを観ない。
映画館に足を運ぶ事も殆どなく、DVDも借りない。テレビで放映されてもチャンネルを合わせない。
基本、もう新しい「他者の創作物」に興味がないのである。
結果、観るものといえば20~30代のまだ感受性が豊かで許容範囲が広かった時の作品を反芻する位なもの。
「パンズ・ラビリンス」は今回たまたま知り合いから薦められた流れで観た作品。
タイトルもストーリーも一切知らない作品だったから予備知識もない。
この作品が2007年のアカデミー賞他数々の映画賞を撮った「名作」であることすらまったく知らなかった。
それほどまでに最近の映画には疎いのだ。
ストーリーに関しては、各方面でレビューがあるだろうからここでは記さない。
基本、残酷でえげつない表現映像は生理的に受け付けない。
この作品に限らず、最近の映画は視覚効果がリアルになりすぎて作品鑑賞以前に、生理的に堪えられないものが多い。
特にもう50を超えると、若い頃は平気だった多少刺激的な表現ですらもう見ることが出来ない。
それにヨーロッパ映画は陰湿なものも多く「ブリキの太鼓」を観て以来、こういった系統の作品はまったく受け付けられなくなった。
スタンリーキューブリックの作品「時計仕掛けのオレンジ」も学生当時は普通に楽しめたのに、今はもうダメだ。
「ジョーズ」も高校生時代に映画館で普通に観ていたのに、もう今は刺激的過ぎて耐えられない。
ましてや最近の特殊効果のリアルさは当時の比ではない。
「プライベート・ライアン」しかり、作品の評価以前に正常な精神を保てない映像に辟易するというか「観たくないもの」に対する拒絶反応が先に立って鑑賞どころではないのだ。
例えで言えば「磨りガラスを爪で引っかく」不快感に似て、正常な精神を著しく阻害するのである。
嫌な感覚が何日も続くような、そんな不快な感覚。
「ブリキの太鼓」を観た後、何日後悔したろうか。
ジェットコースターとか、ああいった重力系アトラクションの不快感と似ている。
ああいったものに好んで乗る人間の気が知れない。
「パンズ・ラビリンス」もそういった生理的に受け付けない映像が満載で「鑑賞以前」の問題でダメであった。
確かに内容は世俗的幻想世界とリアルな現実世界を巧みに対比させ観るものを引き込む魅力がある。
しかし拒絶反応が出てしまう映像があるので鑑賞に堪えられなくなる。
これを20代の時に見たらそんな拒否反応はなかったかもしれないが、もうこの歳だと全然ダメになっている。悪い意味で影響を受けてトラウマを呼び起こし精神を不安定化させるのだ。
人間はそういったものを呼び起こさないよう、歳を重ねるにつれそのような恐れのある刺激は極力避けるものだ。
だから自分のような人間はこの歳になったら観てはいけない映画だった。
あと、ファンタジーに対する考え方というか、欧米人は深い森の中に棲む「幻想世界の生き物」を所詮野蛮人が妄想した役にも立たない幻という捉え方をしがちで、この映画でも主人公が観た「妖精世界」は結局、現実逃避から産まれた「妄想の産物」として処理され、哀れな結末を迎えている。
結局、彼らにとって救いはキリスト教であり、古代人が信仰した「土着宗教」から派生した「ファンタジー」は遅れた野蛮人の邪教であって、そんなものに救いはないぞとでも言いたげである。
確かリュック・ベッソンの「ジャンヌ・ダルク」という映画も天からの啓示を受けて戦に立ち上がったのは、結局のところイカレタ少女のトラウマが原因の妄想事でしかなかったとして処理されている。
一方、日本のような森羅万象、すべてのものに八百万の神が宿る世界では「ファンタジー」にこそに真理があって自然に身を委ねるところに救いがあるという捉え方が普通なので、この「パンズ・ラビリンス」のような結末を見ると非常に違和感が残る。
もっとも、そういった部分を除けば映像も雰囲気もストーリーもよく出来た映画。賞をいくつも獲ったのも頷けよう。
いずれにせよ、自分の感性が錆びれ、許容範囲が著しく狭くなり、刺激的な映像にまったく耐えられなくなってしまった己の「老化」に吃驚する。
歳を取るというのはこういうことだ。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/