イーハトーブ紀行記

旅、訪問記
09 /21 2017
先日の3連休に宮沢賢治の里、イーハトーブ花巻に赴く。
台風18号の渦中、花巻市近郊にある「宮沢賢治記念館」周辺を観て回った。

記念館のある山は胡四王山といい、生前、宮沢賢治の創作の源泉にもなった場所。
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そこからは花巻市内が見下ろせ、イギリス海岸のある北上川も望める。
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果たして実際、賢治がここまで登ってきて、同じ風景を見ていたのだろうか?
胡四王山頂上に位置する記念館脇の雑木林には、鉄道もないのに古い信号機が2本立っている。
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これはおそらく宮沢賢治『シグナルとシグナレス』を模したオブジェなのだろう。
『シグナルとシグナレス』は、花巻駅に乗り入れていた旧花巻軽便鉄道と東北本線の信号機を擬人化させた儚い恋物語だと記憶する。
台風一過の風が猛烈に吹く中で、その信号機はただひたすら無言で突っ立っていた。
本来は廃棄処理されるはずの信号機がオブジェとしてここに持ち込まれた運命。
この運命はいったい誰が決めたのだ?
お前たちは選ばれた。
そして、選ばれなかった信号機は鉄屑となる。
恐ろしい。

記念館に隣接した駐車場には「山猫軒」というレストランがある。勿論「注文の多い料理店」をモデルにしているのだろう。
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まあ、メニューの食材にされても今更悔いはないので、雑炊をオーダーし、啜る。

胡四王山の麓には宮沢賢治関連の施設がいくつかあって童話館もそのひとつ。
富田勲がプロデュースした空間もあって、異形な生物のようなオブジェが森の中に配置され、こちらを睨んでいる。
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『銀河鉄道の夜』をイメージしたものだろうか?
夜になるときっとこの地球外文明の産物のようなオブジェは輝きだしてより一層、妖艶な空間を構成するのだろう。
宮沢賢治の童話をモチーフに初音ミクとコラボした富田勲のことだ。恐るべき仕掛けがあるに違いない。
ここはもしかすると異星人を召喚するフィールドかもしれぬ。

移動には新花巻駅前のショップで借りた補助電動式自転車を使った。
街道沿いのコンビニ前にアニメ『グスコーブドリの伝記』の主人公ブドリとネリの像が突っ立て居る。
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ひもじい妹の嘆きが恐ろしいアニメだった。
こんなところに突っ立って何をしているのだと尋ねても、何も応えず。
やはり独身50代後半男性を相手にする暇はないらしい。

暫く自転車で胡四王山周辺を散策。台風一過の青空の下、稲穂の黄金色が輝く。
JR釜石線の踏み切りで暫し佇む。
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近所の農家のおばさんが踏み切りでもないところで線路を横切る。
都内だったら目くじらを立てる輩は、ここには居ない。
このゆっくりした時間の流れに意味がある。

自転車のコントロールを誤り、畦道に誤って突っ込んでしまう。足が踝まで土に埋もれる。
肥えた土だ。
いまでは当たり前の豊かな培土も、賢治の生きていた時代は容易く手に入るものではなかったのかも知れぬ。
人通りもなく、閑散とした田園だけが広がる現在のイーハトーブ。
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派手な商業施設も歓楽街もないが、ここには物言わぬ肥沃な土がある。
やろうと思えば自給自足も可能だろう。
日本の食料自給率は恐ろしく低い。にも拘らず、更にこの肥沃な大地すらも潰す流れがある。
この愚かしき行いに、賢治が生きていたらどう思ったろうか?
意外に無関心で春画を読み漁って自慰に耽っていたかも知れぬな。
俗人賢治も棄てがたい。

この花巻イーハトーブという辺境にこだわり、農業以外にこの地で営む人々も少なくはない。
宿でカクテルを提供して頂いた方もその一人だろう。
作っていただいたカクテルを飲み干すと、思い込みとは解っていても何か格別のモノがある。
これも一期一会というものか。
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トンボが路線バスの中に迷い込んでいた。田んぼで乱舞するトンボなど珍しくはないのだろう。
運転手は何事もなかったかのようにバスを走らせる。
コンビニも何もない閑散とした新花巻駅前に戻ると、竜のような新幹線が爆走して通過していく。
どこかキチガイじみている。
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帰路は「はやぶさ」。
320Km/h。余りにも早すぎて目が廻る。
「狭い日本、そんなに急いでどこへいく」
この高度成長期のキャッチフレーズは今も変わっていない。乗っている人間が消えつつあることを除いては。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/