神に選ばれる歌姫

ラジオ
06 /30 2011
先日、池袋西口駅前広場で佇んでいた時、いきなり後で歌声が聞こえた。
何事かと振り向くと、一人の女性ストリートミュージシャンがマイク片手にライブ演奏を始めたのだ。
ちょっとアニメ声が入っていたが、決して下手ではなかった。
寧ろ、普通にプロとしても通用する歌唱力だし、曲調も悪くない。
でも、聴衆は殆ど居らず、スタッフらしき人物も居なかった。

彼女は何故、こんなところで歌っているのだろう?
彼女はプロを目指しているのだろうか?
それともあくまで趣味で、野外演奏しているのだろうか?

彼女の歌声を聞いていたら、数ヶ月前より、ラジオで何回もパワープレイされていたある曲を思い出した。
曲名は「カロン」だったか。
「ねごと」というグループが唄っているらしい。
どっちが曲名でどっちがグループ名かややこしい。
この歳になると新しい音楽を取り入れる感性が錆付いてラジオから流れる様々な楽曲もあっという間に脳をスルーしていくのだが、何故かこのグループの歌は妙に耳に残った。
なんかのアニメ主題歌なのカナとも思ったがそうでもないらしい。
しかし、想像力を活性化させる興味深い歌声だ。

この「ねごと」というグループが何でこんなにラジオでプッシュされているのかは知らない。
何かのオーディションかに受かって、やり手プロデューサーの目に留まり、晴れて順調にメジャー線路に乗ったのだろうか?
先日、池袋路上で聞いた無名のストリートミュージシャンも、だいたいこの「ねごと」と同じ世代に見えた。
歌の質や歌唱力も遜色ないように思えた。
にも拘らず、一方が全国のラジオから流され、一方が観衆のいない池袋駅前の路上で唄わざるを得ないこの差は何なのだろうか?

CDが何万枚も売れて、ヒットチャート上位に食い込む事を望まないミュージシャンはいない。
自分の歌がより多くの人に聴かれ、愛されるのはクリエーターとして本望だろう。
「ねごと」もまた、例外ではないと思う。
彼女たちは夢を叶えたのだ。
だがなぜ、このグループがメジャーになり、池袋の少女が路上で唄っているのか、自分にはその差を伺い知る事は出来ない。
ただの運か?
タイミングか?
様々な出身要素か?

自分からすれば、逆に「ねごと」が池袋の路上で歌い、ストリートミュージシャンのほうがラジオから流れてきても、何ら違和感を感じなかったろう。
メジャーとアマチュアの差とはいったい何ぞや?
歌姫になる星の下に生まれるか否かの差はどこからくるのか?
それは誰が決める?
神様か?

あの日以降、池袋路上ミュージシャンの姿は見ていない。
もっともあまり池袋に頻繁に行く訳ではないから、今でも同じ場所で唄っているのかもしれぬ。
だがもう、どんな歌だったのかも覚えていない。
「ねごと」のほうは今でもラジオから頻繁に歌が流れてくるから、曲が頭の中でぐるぐる回っている。

あの池袋ストリートミュージシャンの歌がいつかラジオから流される日が来るとは思えない。
やがて、永遠に2度と聴かれる事もなく忘却の彼方に去ってしまうのだろう。
夢破れた数多の無名ミュージシャンが奏でた幾万の楽曲と共に。

蝉時雨もまだなのに、真夏のような日差しの日々。
普段は聴こえない九州のFM放送局がふっと雑音の中から浮かび上がってくる。
ラジオに耳を傾けると「ねごと」の曲が流れてた。

運命の扉は一瞬。


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あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/

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