気持ちの悪い国日本の未来

報道
11 /30 2010
悪名高き官房長官がいつだったか国会で自衛隊の事を「暴力装置」とのたまわったそうだ。
野党やメディアは騒ぎ、いつのまにか自衛隊の事を「国を守るために必死になっている隊員に失礼」等と大合唱だ。
しかし待てよ。
ついこの前までマスコミは、自衛隊のことを憲法9条に鑑みて存在すら否定する論調で異端児扱いしていたではないか?
いつから「国を守る大切な組織」になったのだ?
気味が悪い。

自衛隊が「暴力装置」である事は論を待たない。
武装組織である自衛隊から「暴力行使機能」を抜いたら何の存在価値もない。
「国防」を「暴力」と同意語で語るのは如何なものかと思うが、力ずくで己の価値観を実践する上においては、国防は暴力の一部なのだ。
それを踏まえて自衛隊を「暴力装置」と語ったのは正しい。

しかし官房長官は自衛隊の最高司令官たる首相を補佐する立場である。
己の子飼いの武力集団を「暴力装置」と発言したのでは、些か自覚に欠ける。
おそらく官房長官は自衛隊を己の政策実践の手段から除外しているのだ。
なぜなら「軍隊」というものをどう扱ってよいかまったく解っていないから。
出来れば拘わりたくないのだ。
つまり客観的な視点からしか自衛隊を見れないから平気で「暴力装置」というような言葉を使ってしまう。
どう考えても配下の集団に使うべき言葉ではない。
そんな「飼い主」に武装集団たる自衛隊が忠誠を誓うとはとても考えられない。
すでに、この状況において官房長官や首相が自衛隊を指揮する能力は存在していない事が証明された。
つまり、もはや現時点においてシビリアンコントロールは崩壊していると確信出来よう。
現政権を牛耳っている官房長官は自衛隊を信用していないし、自衛隊は官房長官を最高司令官に値する人物とは思っていない。
実際、尖閣での漁船衝突事故におけるビデオを流出させた海上保安官を逮捕出来ずにいる事が何よりの証拠。
今や官房長官を筆頭とする現政権は自衛隊や海上保安庁、警視庁などの「暴力装置」をコントロール出来ずに危険なステージへと突入し始めた。

先日、テレビに映っていた着弾の映像が38度線近辺の韓国領ではなく、日本の石垣島だったらどうなっていたであろうと思う。
あの映像が中国軍による石垣島への空爆、ないし艦砲射撃であったのならば、まさしく極東が新しい歴史の幕開けを告げた「号砲」になっていたろう。
そしてその可能性は明日にでも起こりうる。
尖閣や先島諸島は急速に覇権主義を露骨に推し進める中国にとって最初の「侵略地」であり、海洋権益を奪取するための重要な橋頭堡になる。
そしてその実践の時はすでに来ている。
外交防衛能力ゼロの現日本政権下にあって、中国の海洋進出の夢を実践するには正に千載一遇のチャンスがやってきたのだ。
己の子飼いの武装集団である自衛隊を「暴力装置」と言い放った官房長官がいる国だ。
そんな「最高司令官」をいただく軍隊がまともに動くはずもない。
侵略する側はまさに時が満ちたと思っているだろう。
そのシミュレーションを妄想してみると実に面白い事になりそうだ。

○月○日、突如、尖閣諸島沖を遊弋していた中国警備艇が海上保安庁の巡視船に発砲。
数隻を撃沈し、保安官は多数殺害される。直ちに中国海兵隊が尖閣諸島へ上陸。
中国外交部は声明を発表。
内外に尖閣諸島の実効支配を宣言する。
同時に先島諸島に空爆と艦砲射撃を開始。島内の主要施設を破壊し、住民も多数が死傷する。
一方、日本側は中国の動向を俄かに察知していたものの、何の行動も取らず静観。
尖閣諸島周辺の巡視船が攻撃を受けた報を聞き、狼狽するのみ。
とりあえず巡視船を退避させる命令を出すくらい。
外務省は一応、中国に抗議声明するが無視される。
逆に中国政府からこんな返答が。
「尖閣諸島は元来中国領であってその周辺に不法侵入していた日本の巡視船を実力で排除しただけ。この紛争の責任はすべて日本側にある。今事件における中国側の受けた損害の賠償と謝罪を要求する」と反論される。
日本の官房長官はそれに対して記者会見し「中国の真意が解らない。こんなことはお止めになってください」と涙ながらに呟くだけ。
一方、在日米軍はまったく動く様子がない。在日米軍司令部は「尖閣問題は中国と日本当事者で解決すべき問題」と介入を避ける発言を繰り返すのみ。
おそらく、裏では事前に中国から今回の作戦について通告済みだったのだろう。アメリカはこれを看過した。
中国市場を考えれば尖閣諸島など取るに足らない。アメリカ本土の安全保障には何の影響もないからだ。
それを知らずに日本の外相は何回も在日米軍に介入を要請するが無視され続け、記者会見では「アメリカは動いてくれないんです。どうしたらいいのでしょう?」と逆に記者に尋ねる始末。
この状況を予め予測していた陸海空自衛隊幕僚は密かに三沢のF2戦闘爆撃機部隊を沖縄先島諸島へ移動配備。
首相の防衛出動の命令がないまま独断専行で反撃開始。
尖閣ないし、先島諸島周辺に展開していた中国軍艦船のいくつかに損害を与える。また、沖縄那覇基地に配備されている空自のF15も制空作戦を実行。周辺の制空権をなんとか確保する。
在日米軍も部隊は動かさなかったものの、中国軍に関する情報は適時、自衛隊に提供し実質後方支援に回った。
これらはすべて、現民主党政権の頭越しに行なわれ、官房長官や首相以下閣僚は完全に蚊帳の外。
数時間後に「事後報告」されただけ。
閣僚は為す術もなく、黙って事後承諾を受け入れた。
官房長官だけはシビリアンコントロールを無視した行動だと反論するが、もはや誰も相手にせず。
事態はもうそんなレベルではなかった。
紛争は数日間続き、尖閣付近にいた海上保安庁の船は多数撃沈され死傷者も多数。
一方中国軍も自衛隊の初動反撃によって少なからぬ被害を被る。
これ以上紛争を拡大させると流石に米軍の介入を招くと判断した中国は、先島諸島攻略は断念。しかし結局尖閣諸島は中国軍に実効支配され、中国の目的は8割方達成された。
戦後初の国家間紛争による人的物的損害を被り、尖閣諸島まで奪われた挙句、自衛隊にシビリアンコントロールを無視され、「暴力装置」たる飼い犬に裏切られた現政権は国民や野党から「統治能力なし」という轟々たる非難を浴び、総辞職を余儀なくされる。
官房長官は辞任後、密かに中国に亡命を図るが発覚し投獄。
首相以下閣僚は紛争責任を追及され議員辞職まで迫られるという有様。
国民やマスコミはシビリアンコントロールを無視した自衛隊を非難するどころか賛美の嵐。参謀長や反撃作戦立案した自衛隊高官は英雄視される。政治は混沌から挙国一致内閣へと転換、中国に対して軍事的に対峙する政策が推進される。憲法は改正され、核武装も選択肢の一つとして上がってきた。
しかし、中国からの経済依存脱却は容易ならぬことで、国内経済は深刻な状況に。国民生活も困窮。
新政府は国民の不満を外へ向けるため、尖閣と竹島奪還作戦を画策するが・・。
こうして日本を含めた極東は新たなる紛争のステージへと展開していくのである。

如何であろう。
おそらく程度の差はあれ、遅かれ早かれこんな状況がやってくるであろう。
望むと望まざるに拘わらず、中国の覇権主義は日本を「気持ちの悪い国」に推し進めていくだろう。
自衛隊たる「暴力装置」がまた力を持つ時代。
マスコミが軍隊を賛美する時代。
時代は繰り返す。
それが歴史だ。
あの、どうしようもない官房長官はその新たなる歴史の序文に記されるだろう。
恥ずかしい意味でね。

あびゅうきょ

漫画家あびゅうきょ
職業/漫画家
ペンネーム/あびゅうきょ
生年月日/19××年12月25日
血液型/O
星座/やぎ座
出身地/東京都
帝京大学法学部卒
徳間書店刊「リュウ」1982年5月号『火山観測所』でデビュー
著書/
大和書房刊『彼女たちのカンプクルッペ』(1987)
講談社刊『快晴旅団』(1989)
日本出版社刊『ジェットストリームミッション』(1995)
幻冬舎刊『晴れた日に絶望が見える』(2003)
幻冬舎刊『あなたの遺産』(2004)
幻冬舎刊『絶望期の終り』(2005)

公式ホームページ
http://www.ne.jp/asahi/abyu/abe/